2021年ウェブ解析士(日本語)テキスト

9. 第8章:ウェブ解析士のレポーティング

第8章
ウェブ解析士のレポーティング

あなたは、デジタルマーケティングを実施してから半年が過ぎました。目標を安定して達成しているだけではなく、来期の改善計画も順調に実行できています。そして、期首の経営会議の課題もなんとかレポートにまとめることができそうです。そんなとき、上司から「来年度の予算確保のために、今年度の結果と来年度の収益シミュレーションを経営会議でプレゼンテーションして欲しい」と指示を受けました。

デジタルマーケティングに関わって以来、さまざまな取り組みを行い、失敗と成功を重ねてきました。これまでの成果とこれからの施策は頭の中にはイメージできています。そして、経営会議でのプレゼンテーションの時間は15分です。

先輩は、「論理構造も大事。ビジュアルも大事。でも一番大事なのは、君が役員にどんな行動をして欲しいかを明確に伝えることなんだよ。それは、役員が君の考えていたとおりの意思決定をするかどうかだね」

「短い時間で役員に納得してもらい、行動させるって!? そのために、私が伝えるべきことはなんだろう…」

限られた時間の中で、今年の功績を説明し、さらに来期の活動の承諾を得るには、どのようなレポート、プレゼンテーションをするべきでしょうか。


第8章では、「相手に伝わり、相手を動かすレポート」を作るためのポイントと表現方法について学びます。

  • 「8-1. ウェブ解析レポートの種類と作成の流れ」では、ウェブ解析レポートの種類と関係者を動かすレポートの作成手順を学びます。
  • 「8-2. レポートの設計とロジックの組み立て方」では、レポートの具体的な設計方法と、ロジックの組み立て方を学びます。
  • 「8-3. レポートの表現方法」では、レポートのレイアウトや表現方法を学びます。
  • 「8-4. プレゼンテーションに役立つツール」では、ツールを使ったデータ集計やビジュアライゼーションの自動化を学びます。
  • 「8-5. ウェブ解析における統計基礎」では、ウェブ解析士に必要な統計基礎を学びます。
  • 「8-6. グローバルでのレポート作成」では、海外向けのウェブ解析レポートの考え方や作成方法を学びます。

8-1 ウェブ解析レポートの種類と作成の流れ

ウェブ解析レポートは、関係者が行動できるものであることが重要です。そのレポートにより、促される行動ができなければ、それはウェブ解析レポートではありません

8-1-1. ウェブ解析レポートの条件

ウェブを取り巻く環境は、常に変化しています。少し前のレポートを振り返ってみても、すでに価値がなくなっていることがほとんどです。

今すぐ行動(Action)を起こさせるものでないと、価値がないのです。価値を高めるためにも、今困っていることを解決し、改善するレポートであることが重要です。

ウェブ解析で求められるレポートの必要条件は、次の3つです。

ファクト(事実)ベース

レポートはデータや行動などの事実に基づいていなければなりません。事実ではないものはレポートに含めてはなりません。また、事実を曲げてもいけません。

行動を促す

レポートは相手を動かすためにあります。動かなかったということは、内容が伝わらなかったか、良くないレポートだったということです。

独り歩きを前提とする

レポートは報告者抜きで関係者に共有されます。独り歩きすることを念頭に置き、レポートだけで正しく伝わる工夫が求められます。

8-1-2. ウェブ解析レポートの種類

ウェブ解析レポートには、目的によってさまざまな種類があります。目的と特徴を理解して作成してください。

アクセス解析レポート

ウェブサイトのアクセスログデータをもとにしたレポートです。アクセスログデータは100%の正確性があるわけではありませんが、ほかのデータに比べて精度が高いといえます。視聴率調査などのデータとアクセス解析のデータに食い違いがある場合は、アクセス解析データのほうが精度は高いと考えられます。

広告効果測定レポート

主にインターネット広告のレポートを指しますが、テレビ広告や新聞広告などの効果測定を含むこともあります。扱う広告や媒体の種類によって、同じ指標でも値や計算式が異なることがあるので、必ず計算式や基準を確認してください。確認すべきことは、測定するキャンペーンの期間やクリック、セッションコンバージョンなどの定義です。

また、広告手段によっては、電話やFAXの効果を測定することも検討してください。ターゲットユーザーや媒体によって、ウェブよりも電話やFAXが重視されている場合もあるからです。

ソーシャルメディア解析レポート

ソーシャルメディアやコミュニティサイト、ブログなどを評価するレポートです。ユーザーやセッション数の増加など、単に数値的なデータを日別に拾うだけではなく、イベントやキャンペーンなどについてのコメント内容を吟味することも重要です。アクセス解析や広告効果測定のように精度の高い分析は困難ですが、特にイベントの前・中・後で比較して分析すれば、数値では捉えられない知見が得られることもあります。

検索エンジン解析レポート・SEO指示書

検索エンジンのオーガニックサーチの結果について評価するレポートと、SEO改善のための指示書です。アクセス解析やGoogle Search Console、サードパーティーの順位測定ツールなどのデータを使用します。

内容としては、内部リンク、外部リンクのリンク先やリンク数、サイト内のHTMLや文字・画像の評価、ターゲットキーワードでの競合サイトとの比較や対策などが中心です。また、問題点改善のためのHTMLやコンテンツ更新についての指示書が含まれることもあります。

ユーザビリティ・ヒューリスティック調査レポート

サイトの使い勝手についてのレポートです。アクセス解析のデータは数値を示すだけなので、使いやすさやデザインの改善ポイントは見つけにくいものです。そこで、まずアクセス解析で問題のあるページを発見し、そのページに対してユーザビリティ調査やヒューリスティック調査を行います。

ユーザーアンケート調査レポート

アクセス解析などの定量的なデータでは、ユーザーの意図や気持ちなどが把握できない場合があります。そこで、アンケートを実施することによって、ユーザーの目的や意図を理解します。アクセスログ解析や広告効果測定にユーザーアンケートを併用すれば、よりユーザー心理に沿った分析が可能です。このようなユーザーアンケート結果は1つの指標になります。例えば、キャンペーンを実施した前後でユーザーからの製品やサービスに対する印象がどう変わったのかを測定することは、有効な指標といえます。

ベンチマーク解析レポート

ベンチマーク解析レポートは、外部環境調査レポートの1つで、競合他社の動向を知るためのレポートが求められます。ウェブ解析では、いくつかの方法で競合他社の動向を調べることができます。例えば、キーワードツールで競合製品と自社製品へのユーザーの関心動向を調べることで、プロモーションやキャンペーンの効果を推定できます。また、インターネット視聴率調査で競合他社のデジタルマーケティング状況を把握し、自社と比較することもできます。

ミクロ解析レポート

一般的なアクセス解析ツールは、ページビューやセッションといったユーザーの動向を集計したデータを取り扱います。一方、ユーザー単位でユーザーの行動を把握できるアクセス解析ツールもあります。ミクロ解析レポートではこういったツールを使い、ユーザビリティ調査に近いアプローチで、ユーザー心理を汲み取り、サービスやウェブサイトの改善につなげます

8-1-3. ウェブ解析レポート作成手順

ウェブ解析レポートは、[図:レポート作成の流れ]のような手順で作成します。

図:レポート作成の流れ

図:レポート作成の流れ

1. レポートの準備

ウェブ解析レポートの作成は、事前準備から始まります。「ビジネスモデルの把握」「ウェブサイトの把握」「収益構造の把握」「関係者へのヒアリング」という4つのステップがあります。

ビジネスモデルの把握

レポート対象となる企業のビジネスモデル、収益構造、ターゲットユーザーや競合企業を把握します。売上・原価・経費などがどのように配分されているのかも理解してください。

ウェブサイトの把握

その企業において、ウェブサイトがどのような役割を担い、何を目的としているかを把握します。商品の購入、会員登録、資料請求など、目的はウェブサイトによって異なります。複数の目的がある場合は優先順位を付け、特に重要なゴール(KGI)を決めます。

収益構造の把握

ウェブサイトを運営する上での収益構造を把握します。コストには、初期費用や運営費用、スポットで発生する費用があります。ウェブサイトのゴール、売上、コストについて把握できたら、目標値を定めます。ここで定めるのは、具体的な金額とするのが理想的です。「ウェブサイト経由で商品を550万円販売する」など、関係者が納得できる数字にしてください。

関係者へのヒアリング

関係者、特に実際にレポートを見る報告対象者に以下のようなヒアリングを行います。

  • ゴールの売上や経費の把握は正しいか
  • KGI、KSF、KPIの整合性がとれているか
  • ゴールやKPIを達成するための方法や仮説は何が考えられるか
  • どの手法や改善が目標達成に最も近いと考えられるか
  • 同業他社や競合はどこか
  • 現状や今後伸びそうなターゲットユーザーは誰か
  • ウェブサイトやレポートで「知りたいこと」「解決したいこと」「不満や課題」
  • 報告に求める情報と活用方法、頻度や細かさ

2. 企画とデータ収集

企画立案のために準備した情報を整理、分析します。ここで、提案となる素案を考え、レポート作成を進めます。

要件(RFP)の確認

施策と成果の確認、担当ごとのタスク、提案の実行可否をまとめた課題管理表、顧客ヒアリングから今回のレポートに求められる要件、目的、範囲、工数をまとめます。

データの収集(Detecting)

これまで学んだ知識をもとにデータを確認し、定点観測、仮説検証、問題発見の視点から気付きをメモします。

提案施策の決定(Proposal)

気付きから今回提案する施策を洗い出し、インパクトとスピードと実現可能性から優先順位を決め、絞り込みます。

ここで、企画とデータ収集のヒントを紹介します。

セグメント・比較・トレンドで見る

データを漫然と眺めても、気付きを得られることはほとんどありません。まずデータをセグメントに分けます。例えば、「新規訪問者とリピーター」や「自然検索経由とリスティング広告経由」など、セグメントに分けることで気付きを得やすくなります。また、前月、前年同月と比較するのも効果的です。全体傾向から、状況が好転しているのか、悪化しているのかを把握すると改善策につながります。

競合他社のウェブサイトを参考にする

競合他社のウェブサイトを参考に自社サイトを改善するのも一案です。競合は、同じ業種の企業だけとは限りません。ターゲットユーザーが同じであれば、彼らが訪れそうな異業種のサイトも競合になります。どのようなコンテンツが人気を得ているかなども参考にしてください。

ウェブ以外の情報を参考にする

既存ユーザーへのヒアリングや競合他社の紙カタログなど、オフラインの情報も積極的に参考にしましょう。アクセス解析では見えなかった、各社の強みやユーザーのニーズがわかります。

進行速度、実現可能性、期待効果の順に優先順位を付ける

改善提案をするときには、優先順位を付けます。その際、対象となる改善の進行が速い施策、コストや技術的に実現可能である施策、改善結果の期待効果が大きい施策を選んでください。進行が速い施策は、改善サイクルの進行速度も上がります。実現の可能性が高い施策は、改善活動の再実施や再施行が容易になります。期待値が大きい施策は成果も上がります。ケースバイケースですが、その際の優先順位は「進行速度>実現可能性>期待効果」と考えてください。一般に、実現可能性や期待効果が小さくても、進行が速ければPDCAサイクルを高速化でき、改善効果は大きくなります。

精度の限界を理解し、施策を実施する

解析ツールで実現できる精度には限界があります。データの精度に限界があることを理解した上で仮説を立て、施策を実施することが重要です。注目すべきは、平均やトレンドと乖離する「外れ値」です。その原因を考察してください。

注目すべきは「人」

ウェブ解析は「人の解析」ともいえます。どのような想いで商品を探し、どのような考えでコンバージョンしたか、ユーザーの気持ちを汲み取ることが重要です。ウェブ解析士は単に数字を集計するだけではなく、「ユーザーのインサイト(購買意欲の核心)」や「インテント(購買する意図)」に気付くことが重要です。

3. ラフの作成

どのような提案をすれば伝わるか、まずはラフを作ります。得られたデータをいきなりレポートにすると、ロジックがなく、ストーリーが弱くなりがちで、相手に伝わりにくくなるので注意してください。

ロジックツリーの組み立て(Logic Tree)

提案施策とデータをどの順番で表現するか、伝えることを意識してロジックツリーを作成し、KGI、KSF、KPIとの関係を明確にします。具体的な作成方法は「8-2-2 ロジックツリーの作り方」を参考にしてください。

レポートのアウトラインを組み立てる(Outlining)

ロジックに沿って、レポートのフォーマットを決め、大まかな流れを決めます。

タイトル、コメント、データのラフの追加(Rough Design)

ページごとのタイトルとコメントと図表のラフを決め、スペースを調整します。このタイミングで、コメントの素案を入れてもよいでしょう。

ラフ作成のヒントも紹介しておきましょう。

体裁を整える

ページ番号を振る、レポート全体・ページごとにタイトルを付ける、表紙と目次を付ける、担当者とのやりとりをレポートに反映した場合はバージョンを付ける、フォント・文字の大きさに配慮するなど、体裁を整えます。さらに、誤字脱字がないか、日付が古くないか(前回のレポートをコピー&ペーストする際には特に注意する)、目次とページ番号が合っているか、グラフの軸・タイトルは抜けていないか、ページ番号は抜けていないか、コメントは抜けていないか、白黒印刷でも見やすいかなども注意すべきポイントです。

エグゼクティブサマリーを付ける

レポートにおける概要、全体の要約を述べる部分です。レポート全体の傾向をつかむために、レポートの最初のほうにエグゼクティブサマリーを付けるようにしてください。ただし、1ページか多くても2ページ以内に収めます。エグゼクティブサマリーがあると、全体を把握しやすいだけではなく、見直しにも役立ちます。

報告は上位者向けのものから

社長、事業部長、部長など、各役職向けに報告する場合、職位が上位の人に対するレポートから先のほうに配置するようにしてください。上位者ほど、レポートを見る時間が限られているためです。

誤解を招く表現を使わない

レポートは独り歩きします。報告会において口頭でどれほど説明しても、社内外の関係者に回覧されるうちに、書かれたことだけが事実として受け取られます。レポートにはそれだけの重みがあるため、ウェブ解析士は慎重に内容を吟味することが求められます。

報告会でウェブ解析に基づく課題改善が効果的だとわかり、組織として課題発見や施策を行うと、測定すべき指標が増え、作成するレポートも増えていきます。従って、レポート作成はできるだけ自動化を検討します。例えば、BI(Business Intelligence)ツールには自動レポートの体制を構築できるものがあります。また、ウェブ解析ツールの中には、レポートを日次、週次でメール配信できるものもあります。

ウェブ解析レポートはデータを根拠にするため、説得力があります。しかし、多くの場合、発見される課題には緊急性がなく「よい話を聞いた」という印象で終わってしまいがちです。今回の課題を次回につなげるためにも、課題管理表(8-4-2「課題管理表による施策の管理」を参考にしてください)を作って、報告会で挙がった施策の期日、担当者、内容を明示し、進捗を確認することが重要です。事業の成果につなげるために、進捗確認を徹底してください。

4. レポートの作成

ラフに図表や文章を加えて完成させ、共有します。コメント、表、グラフでの見やすさ、課題管理表の作成、関係者とのレポート共有方法を工夫することで、相手が動きやすい状況を作ります

表やグラフによる表現

データの表現方法として、表やグラフの選定とマーキング方法を決めます。

課題管理表のアップデート

決定、却下、保留に分け、課題を更新します。レポートの中で提案したことの実施可否、納期、担当を決め、次のミーティングで進捗を確認します。

関係者とのレポート共有

日時、表現方法、協議内容を決めます。発表用資料と配布用資料を分ける場合は、配布用はあとで参照されることを意識して作成してください。

レポートの納品方法

レポートは、パワーポイントやエクセルやPDF、そしてGoogle docsの各種ツールなどが考えられます。レポートを渡す相手の要望に合わせて、ツールを選びましょう。

レポート作成についても、いくつかのヒントを紹介しておきましょう。

ワンチャートワンメッセージ

1つのチャート(表やグラフ)に対して、伝えたいことは1つにします。注目させたいことを表現し、支えるためにチャートを用います。このチャートとメッセージが一対一になっていると、伝わりやすくなります。同じ数字でも、伝えたいことが3つあれば、3つのチャートを作って示すのがベストです。

タイトルを最重要メッセージにする

タイトルは一番目立つメッセージなので、伝えるべきことを含めるように常に考慮してください。具体的には、新聞の見出しをイメージするとよいでしょう。例えば、「9月のウェブサイトユニークユーザー男女比率」というような円グラフであれば、「9月」「ウェブサイト」「ユニークユーザー」は本当にタイトルに必要でしょうか? ヘッダーやフッターに書いてもよいかもしれません。書くのであれば、「9月は男性比率急増、広告効果か?」などとすると目にはいりやすくなります。

伝えるべきことを伝え、伝えなくてよいことを削る

起こり得る問題や期待できる可能性に対し、関係者が準備しておく必要がある場合は、レポートの中で伝える必要があります。例えば、検索エンジンで大きなアップデートがある、新しいウェブブラウザで使えなくなる広告があるといった場合は、その対策について触れておくべきです。一方、伝えなくてもよいことを削ぎ落とすことが求められます。例えば、比較対象以外のデータは残さないことです。量、割合、変化量などの単位についても、必要ではない単位は削るようにしましょう。

データソースを明らかにする

データの出処を明らかにし、適切にインデックス化します。データの根拠が明示されていないと、すべてのレポートの信頼を失う危険性があります。抽出対象、抽出期間、抽出方法が必要条件です。ディメンションメトリクスフィルタセグメントなどの設定内容をレポートの最後に記載し、共有してください。

データと提案のインデックス化

ウェブ解析レポートでは、まず提案を書き、続けて根拠となるデータを書くことを推奨していますが、このレイアウトにすると提案とデータが離れてしまうことも起こり得ます。提案にはページを割いてしまうことが多いため、データまで同じページに入らないものです。そのときに、データと提案の関係をページ数や章・節を明示してお互いに参照できるようにしておけば、読み手が読み進めたい順番で理解できます。この場合は、データと提案のそれぞれにページ数や章・節を明示します。

リスクと期待値を出す

関係者を行動させるには、行動したときのリスクと期待値を明示する必要があります。リスクとしては、どの程度のコストがかかり、それがどの程度成功あるいは失敗しそうなのか、どの程度の時間がかかり、タイミングはいつなのかを共有しましょう。うまくいった場合、どの程度収益に貢献するのか、どの程度反響があるのかなどの期待効果と、その可能性を伝えましょう。

8-2 レポートの設計とロジックの組み立て方

レポートの具体的な設計方法と、ロジックの組み立て方を紹介します。

8-2-1. レポートの設計

レポート設計で必要となる全体設計と、個別ページの設計方法を説明します。

レポート全体の設計

レポート全体は、[表:レポートの要素]に示したような構成で作成します。記載する内容は構成や情報量で変更しても構いませんが、抜けがあると信頼性の低下を招いてしまいます

表:レポートの要素

レポート要素

記載する内容

表紙

タイトル、期間、解析対象、制作者、セキュリティレベル

ロジックツリー

全体の論理構造

データ概要

データ量、収集方法、データの精度

目次

章立て、タイトル、ページ番号

提案

組織にて実施可否を問う提案

データ詳細

提案の根拠となるデータの紹介

なお、提案やデータ詳細を説明するための附則を配置することもあります。

個別ページのコンテンツ設計

レポートには、ページに「タイトル」「サブタイトル」「データや提案」「コメント」「データからのFinding」「参考ページ」「ページ番号」といった要素を置く必要があり、これらの要素を加えて、[図:レポートのテンプレートの例]のようなレポートのテンプレートを作成します。

「データへのFinding」とは、データから発見した気付きを文章で表現するエリアです。「コメント」には、このページで伝えたい課題や提案を文章で表現します。どの場所にどの内容を記載するかを決めることで、見やすく、わかりやすくします。

図:レポートのテンプレートの例

図:レポートのテンプレートの例

8-2-2. ロジックツリーの作り方

ウェブ解析レポートでは、ある程度のページ数がある場合、全体の論理構造をわかりやすく見せるためにロジックツリーを使って表現します。ロジックツリーは、目的、KGI、KSF、KPI、施策を一覧で表示し、それぞれのページ番号やコスト、期待効果を一覧化することで、目次では表現しきれない目標、施策、指標や根拠を網羅的に一元化します

ロジックツリー作成の手順

ロジックツリーは、次の順序で表現していきます。

  • KGI
  • KSF
  • KPI
  • 施策

図:ロジックツリーの例

図:ロジックツリーの例

根拠として、KPIやKSFの根拠となるデータを紹介しているページや端的な結果を表現したり、費用対効果として、提案実施のためのコストと期待できる売上やトラフィック増加の見込みなどを提示します。

目標からKGIを決め、KSFとKPIと施策を配置しています。これにより、レポートを見る人が全体像を理解できます。

ロジックは戦略から戦術を組み立てること

目標達成に向けた施策を提案する上で重要なポイントは、包括的な戦略を策定し、そこから戦術(施策)にブレイクダウンすることです。

目標達成のためには、広告、検索、SNS、ウェブページなど、各項目について問題となる場所を改善する施策を重ねることになります。小規模な改善であれば現実的ですが、大規模な改善策になると、このような手法では施策の一貫性がなくなり、1つひとつの施策を具体化しにくく、矛盾が発生しやすくなります。

従って、理想的な方法は、ターゲットや改善方針を包括的に戦略策定した上で、その方針に対して問題点を整理し、個別に改善していくことです。この手法であれば、改善策ごとに「誰に向けて」「何を」改善するかが明確になり、施策も具体的になるため、一貫性が生まれます。そのためには、事業分析や環境分析が不可欠です。

レポートの目的はユーザーの体験を改善し、関わる社員やビジネスパートナーの仕事を改善することです。それには、誰に対する問題点を改善するかを明確にすることが一番重要であり、その結果、施策の効果が高まるのです。

8-2-3. 文章やコメントで留意する点

「MECE」(ミーシー)を意識することが重要です。その上で、シンプルでわかりやすい表現にし、倒置法などの文学的な表現は避けるようにしましょう。また、事実・意見・提案を分けることも重要です。例えば、「10pt増加したといえます」という表現は事実か意見かがわかりにくくなりますので「10pt増加した」とシンプルに表現するとよいでしょう。

文章構造でMECEに気を付ける

構造化に欠かせないのが「MECE」と呼ばれる概念です。MECEは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字をとったもので、「それぞれが重複することなく、全体としてモレがない」という意味です。

MECEにより、重要な点の見落とし(モレ)がないか、あるいは、同じことが重複(ダブり)していないかをチェックします。例えば、会社の社員を分類することを考えてみましょう。論理的な文章表現を意識することで誤解を回避できます。

図:MECEと企業の社員構成

図:MECEと企業の社員構成
モレなしダブりなし([図:MECEと企業の社員構成]の①)

男性と女性に分けているので、モレもダブりもない

モレなしダブりあり([図:MECEと企業の社員構成]の②)

「若手社員」とすると、年代別の社員とダブりが発生する

モレありダブりなし([図:MECEと企業の社員構成]の③)

ダブりはないが、契約社員や派遣社員などがモレている

モレありダブりあり([図:MECEと企業の社員構成]の④)

本社勤務以外の正社員がモレているだけでなく、本社の正社員がダブっている

ウェブ解析で重要なスキルは、対象となる事業の全体像を見極め、要素間の関係をわかりやすく整理する「構造化」の思考技術です。構造化には、「論理の構造化」と「事象の構造化」という側面があります。

図:構造化的な思考のためにMECEを活用する

図:構造化的な思考のためにMECEを活用する

MECEを活用するためのポイント

フレームワークを活用する

3C分析4P分析などのフレームワークを使うことで、短時間、かつ、正確に構造の理解が可能になる

ダブりよりもモレがないことに注意する

ダブりはあとで除去できますが、モレは後から追加しにくいので、見落としがないかどうか重点的にチェックする

階層レベルに注意する

正しい論理構造では、同一の階層に位置する複数の要素は、レベルや粒度を同じものにする

図:論理構造で注意する階層レベルの例

図:論理構造で注意する階層レベルの例

関係者の行動を促すコメントを書く

コメントでは、事実よりも仮説や提案を記載します。グラフや表にマーキングすることで、事実を強調することができます。データを見せるだけなら、ExcelやBIツールで行えます。そのデータを解釈し、問題を発見し、改善策を見つけられるのは、事実や業界のことを理解して改善しようと試みる関係者だけです

もちろん、仮説が間違っていることもあります。しかし、正確な仮説を立てることよりも、その瞬間に考えられる問題に対して改善を行い、結果から判断したほうが確実に改善を進められます。PDCAサイクルにおけるCheckからActionを促すことが、コメントの役割です。

8-3 レポートの表現方法

データをわかりやすく表現するには、伝えたいことをいかにシンプルにできるかが重要です。そのためには、レイアウトや表現方法などを決め、色や罫線などを無駄に増やさず、情報量を減らすことが必要です。

8-3-1. レポートの表現方法の基本

伝わるレポートにするために、レイアウトや表現方法のルールを決めます。

レポート全体のレイアウト

レポート内容の表現方法を統一するため、レイアウト要素を決めます。レイアウト要素は、通常はレポートに記載しませんが、表現の基本ルールとして[表:レポートにおける表現の基本]に挙げた内容を決めておくと良いでしょう。

レポートの原則は、「表記ルールを統一し、シンプルにすること」です。色数、フォントの種類、サイズの種類が増えると、伝わらないレポートになってしまいます。色を付けて目立たせるのはどのような場合か、記号を付けるときはどんな場合か、線や文字装飾は何に使うのかなどを始めに決めておくと、全体の統一感が増します。色、記号、線、文字装飾だけでも多彩な表現が可能です。適切な表現方法を選ぶことが、見せたいデータやメッセージを目立たせるコツです。

表:レポートにおける表現の基本

サイズ

レポートを作る前に発表環境を確認し、適切なサイズにする。縦長・横長、用紙サイズ、ディスプレイで表示するなら想定するディスプレイサイズを決める

フォント

フォントは必ず統一する。ページタイトル、サブタイトル、グラフや表のタイトル、コメント、注釈などの要素によって、サイズや配置(中央寄せなど)を決める。行送りなどでアンバランスになる場合は、字詰めやサイズ、配置を調整する

文字装飾

不要な装飾をしない。ボールド、イタリック、下線などの表現をどの目的で使うのかを決める。ポジティブな数値はボールド、ネガティブな数値はイタリック、提案につながる数値や文章は下線などと決めるとよい

割合の表現

パーセント(%)の増減はポイント(pt)を用いる。例えば、3%から6%に増えた場合は「3pt増加」と表現する。

なるべく同系色や類似色でまとめ、理由がなければ色数は3色程度に留める。色数が多いと、読み手にとって、どこがポイントなのかわからないため、注意を引きたいところにだけアクセントとなる色を配置する

グラフ内の補助線や表の罫線などは、極力減らす。レポート内のコンテンツの区切りなども必要最小限の線で表現する。線の数が多いと読みにくくなるため、面で薄い色を背景に敷き、情報の区切りを表現するとよい

記号

タイトルに【 】などの括弧を使ったり、タイトルの頭に■や◆を使う場合は、読み手が読みやすいものであるか十分に注意する。これらは、強調したいデータのために使用し、タイトルなどは文字の大きさで表現する

図:情報量の多い表現(左)とシンプルな表現(右)の例

図:情報量の多い表現(左)とシンプルな表現(右)の例

データの表現方法

データは、「長さ」「太さ」「方向」「形」「サイズ」「色調」「色の強度」「位置」を変えたり、データを囲むなどといった方法を用いてわかりやすく表現しましょう。

伝える情報量を減らす

データを伝えるために一番大切なことは「情報量を減らすこと」です。集計や考察をするときに使っていたテーブルやグラフをそのまま用いると、データの行や列が多すぎて伝わらないことがあります。そこで、次のようなチェックを行って不必要なデータを減らすとよいでしょう。

伝えたいメッセージを確認する

「直帰率が増えている」というメッセージであれば、そのメッセージを伝えるために必要な情報に絞る

不必要な列を減らす

「8月のPV数が減っている」というメッセージであれば、1年間のデータを並べなくても「1年間の平均との比較」「前月翌月との比較」を列にして必要な列を減らすといった工夫をする

不必要なディメンションメトリクスを減らす

「滞在時間が長いページがある」というメッセージであれば、ページビューやセッションは不要

少数のデータは「その他」としてまとめる

円グラフなどの項目で少数のデータが数多く並んでいるとわかりにくくなる。まとめて「その他」とする

最小限の線や点で伝えられるグラフや表を使う

時系列の変化を見せたい時は折れ線グラフ、項目ごとに比較する場合は棒グラフ、など何を伝えたいかにあわせて最適なグラフや図を選択する

8-3-2. 表とグラフの種類

表(単純集計・クロス集計)

最も基本的な表現方法の1つが、表による表現です。なるべく罫線や項目を減らし、面とシンプルな数値で表すようにしましょう。

単純集計

複数の項目に対して、一つの指標であわらしたものです。例えば[表:単純集計の例]は「セッション数」という指標を見るものです。

[表:単純集計の例]のように、項目をデバイス別にし、指標をセッション数としたり、項目をユーザーの新規訪問者、リピーター別にし、指標をセッション数として表現します。

表:単純集計の例

セッション

デスクトップ

17,435

モバイル

10,237

タブレット

784

合計

28,456

クロス集計

単純集計に対して、クロス集計は2つ以上の項目に着目して表現したものです。これにより、複数の項目ごとの特徴や違いがわかります。

表:クロス集計の例

セッション

デバイス別

合計

新規訪問数

リピーター

デスクトップ

17,435

9,016

8,419

モバイル

10,237

5,544

4,693

タブレット

784

405

379

合計

28,456

14,965

13,491

棒グラフ

単純な量の比較をするときに適しているのが棒グラフで、垂直棒グラフと水平棒グラフがあります。[表:単純集計の例]の表と棒グラフを見比べると、グラフのほうが量的な差がすぐに伝わります。直感的に違いを把握するには、棒グラフが最も適しています。

ただし、棒グラフは、あまりにも差のあるデータを比較するには不向きです。例えば、10,000と1では、1がほとんど見えなくなります。棒グラフの幅に決まりはありませんが「その棒グラフを立てたときに自立できそうな幅」を目安にするとよいでしょう。目盛りや長さを省略した棒グラフを見かけることがありますが、正しい比較ができなくなるため、そういった表現はしないでください。

広告A

広告B

セッション

70

35

図:表と棒グラフの例

折れ線グラフ

時間の経過による変化に着目して見るのに適しています。

[図:折れ線グラフの例]は、あるサイトのセッション数(緑)とページビュー数(黒)の月間推移を表す折れ線グラフです。定期的に減少しているタイミングがあり、そのタイミングでセッション数とページビュー数の差が縮まっていることがひと目でわかります。

図:折れ線グラフの例

図:折れ線グラフの例

面グラフ

時間の経過による変化を量で見るのに適しています。2つ以上のデータを重ねて表現する標準的な面グラフと、合計での比率を表す積み上げ面グラフ、全体を100%として割合の推移を示す100%積み上げ面グラフがあります。一般には、複数のデータの合計がわかる積み上げ面グラフがよく用いられます。

[図:面グラフの例(積み上げ面グラフ)]は、2017年の新規ユーザーとリピーターの数を表した積み上げ面グラフです。3月から8月まで全体のユーザー数が急速に増えていることと合わせ、新規ユーザーとリピーターそれぞれの数の変動がわかります。

図:面グラフの例(積み上げ面グラフ)

図:面グラフの例(積み上げ面グラフ)

円グラフ

構成要素の比率を見るのに適しています。円グラフは割合を表すため、一般的には%で表記します。OSやウェブブラウザシェアを表現するときにも、よく円グラフが用いられます。それぞれの利用者数(絶対数)よりも割合が重要なデータだからです。

なお、円グラフは4つ以上の項目を比較するとわかりにくいという欠点がありますので、使う場合は注意しましょう。

100%積み上げ棒グラフ

構成要素の比率の違いを表す場合に使用します。構成要素を表すものとして円グラフもありますが、100%積み上げ棒グラフのほうが複数のデータと比較して見やすいという特徴があります。

[図:100%積み上げ棒グラフの例]の「貴社のホームページ」の項目は、自然検索からの流入比率の割合が業種別平均や目的別平均よりも低いことがわかります。

図:100%積み上げ棒グラフの例

図:100%積み上げ棒グラフの例

散布図

2つのデータの相関性を考えるには、散布図が有効です。縦軸と横軸にそれぞれのデータをプロットすれば、4象限にデータを分類することもできます。

[図:散布図の例]の散布図を見ると、ページのスクロールの長さが長いほど、離脱率が高くなるという傾向が把握できます。

図:散布図の例

図:散布図の例

図:4象限の散布図の例

図:4象限の散布図の例

バブルチャート

縦軸と横軸に加え、各データの面積の大小で第3のデータを表現できるグラフです。

[図:バブルチャートの例(縦軸:滞在時間、横軸:直帰率、バブル:流入数)]のグラフでは、キーワード別の流入数を面積で表しています。各キーワードについてのユーザーの行動傾向がつかめます。

図:バブルチャートの例
(縦軸:滞在時間、横軸:直帰率、バブル:流入数)

図:バブルチャートの例
(縦軸:滞在時間、横軸:直帰率、バブル:流入数)

2軸グラフ

尺度の異なる2つの縦軸を持つグラフです。単位が異なるデータや数の差が大きいデータを、1つのグラフで表すのに効果的です。

[図:2軸グラフの例]は、棒グラフ(総ページビュー数セッション数)と折れ線グラフ(コンバージョン数)を組み合わせた2軸グラフです。グラフの左右両方に軸(目盛り)がある点に注意してください。左が総ページビュー数セッション数、右がコンバージョン数です。左軸と右軸では、桁数が大きく異なります。仮に1軸でこのグラフを表すと、コンバージョン数が少な過ぎて、変化がほとんど見えないグラフになってしまいます。

図:2軸グラフの例

図:2軸グラフの例

レーダーチャート

いくつかのデータを複数の項目の大きさで比較することのできるグラフです。各項目のバランスがよくわかります。「クモの巣チャート」「スター(Star)チャート」とも呼ばれます。注意すべき点は項目の数です。項目数に制限はありませんが、見やすさを考えると5~8角形(=項目)程度が現実的です。また、各項目の単位や量を揃えないとわかりづらくなります。率のみの表示にする、ランクを1~5に分けて表現するなどの工夫をしてください。

図:レーダーチャートの例

図:レーダーチャートの例

スパークライン

表示している数値の横に配置して、その数値のトレンドを示します。一般的には折れ線グラフを使います。Excelなどの表計算ソフトでも作成できます。

Googleアナリティクスでは、数値の下にスパークラインを置いて全体のトレンドを表現しています。このデータはユーザーの全体傾向の数値ですが、スパークラインによって数字のトレンドを知ることができます。

図:スパークラインの例

図:スパークラインの例

カラースケール

一定以上の数値の変化に対してセルの背景色などを変える表現方法で、ヒートマップと呼ばれることもあります。7-2で述べたヒートマップとは意味が異なるので注意しましょう。

カラースケールは条件書式を使って設定するのが一般的です。1色の濃淡で表現する場合、2色のスケールで表現する場合、さらには、3色のグラデーションを使い、値の大小を表します。

[図:スパークラインの例]は、チャネルごとの新規訪問率、直帰率、ページ/セッション、平均滞在時間の表を2色スケールで表現した例です。よい傾向または多い傾向を緑、悪い傾向または少ない傾向を赤とし、それぞれの色の濃淡で値の大小を表現しています。

図:カラースケールの例

図:カラースケールの例

グラフ作成時の注意点

グラフ作成の目的は、データを可視化することでメッセージを伝わりやすくすることです。グラフがわかりにくいと混乱を招くので注意しましょう。

立体グラフや俯瞰的なグラフを使わない

これらのグラフは見栄えはしますが、立体的な棒グラフは正確な大きさや面積がわかりにくく、データの比較が難しくなります。同様に、俯瞰的な円グラフも構成比率を正確に見ることができなくなります。

目盛りやバーを省略しない

1つの項目だけの数値が大きい場合に、目盛りやバーの長さを省略すると、正しい比較ができなくなります。

表現に合わせてグラフの種類を正しく選び、軸の取り方、単位、基準値を用いる

例えば、流入元の割合を月別に表す際、複数の円グラフを描くよりも、積み上げ棒グラフを並べたほうがわかりやすくなります。月次セッション数に大きな変化がない場合には、棒グラフを並べるよりも、月次の変化率を折れ線グラフで表現したほうがわかりやすくなります。グラフの選び方や軸の取り方に注意しましょう。

色や余計な線や文字装飾は極力使わない

色数が増えると、まとまりのないグラフになります。理由がなければ、色数は3色程度に留めましょう。色で違いを見せるときは、同系色の濃淡で表現するとうまくまとまります。また、余計な線はなるべく使わないようにしましょう。縦軸も横軸も必要最小限の線にすると、グラフが目立ちます。文字は、タイトルを含めて、太字や下線を意味なく使用せず、強調したいポイントのみに使うと目立つようになります。

見せたいデータやメッセージを目立たせる

伝えたいデータやメッセージには、文字装飾を加える、データの色を変更する、丸や四角で囲む、グラフの傾きに矢印を付けるといった表現で目立たせます。

8-4 プレゼンテーションに役立つツール

プレゼンテーションで役に立つツールを紹介します。データの集計やビジュアライゼーションを省力化したり自動化したりできます。また、タスク管理用のソリューションも紹介します。

8-4-1. 自動レポーティングツールの活用

事業の成果を上げるためのレポートを作成するには、ウェブサイトのアクセスログだけではなく、売上、顧客データといった多種多様なデータを扱う必要があります

ただし、昨今では、売上、顧客の動向や活動日報、進捗管理など、あらゆる情報がデジタル化されることで、企業が蓄積するデータが急激に多くなっており、集計や課題発見に時間がかかるという悩みを抱える人が増えています。このようなときに、大量のデータが示す事実の把握や課題を素早く発見するために、レポーティングツールやBI(Business Intelligence)ツールが活用されています。

レポーティングツール

日々集まってくる企業のあらゆるデータを、素早くタイムリーにレポートとして閲覧できるようにするツールです。作成したレポートは、メールで自動送信されたり、ウェブブラウザでいつでも確認できるようになったりするため、経営者や上層部との情報の共有化も促進できます。

Google Analytics Spreadsheet Add-on

<https://developers.google.com/analytics/solutions/google-analytics-spreadsheet-add-on>

Googleスプレッドシートに機能を追加する無料のアドオンです。このアドオンを使うと、GoogleアナリティクスのデータをGoogleスプレッドシートにインポートできます。

設定シートを作成すると、そのデータを自動的にインポートできます。Googleアナリティクスでは、セグメントフィルタ、期間などをその都度設定する必要がありますが、このアドオンを使うと不要になります。そのため、設定の手間が省け、ミスも減ります。さらにGoogleスプレッドシートの関数を用いれば、必ず前月の月初からインポートするといった自動化もできるようになりますので、必要なデータを思いどおりにインポートできるようになります。

Search Analytics for Sheets

<https://searchanalyticsforsheets.com/>

こちらもGoogleスプレッドシートのアドオンです。Google Search Consoleの情報をスプレッドシートに取り込むことができます。収集するデータを選ぶことで、検索キーワードについての全データが収集できます。

さらに、スケジュール設定を行うと、定期的にGoogle Search Consoleのデータを収集することができます。この結果とGoogleアナリティクスのデータを組み合わせることも容易です。

BI(Business Intelligence)ツール

大量のデータを処理・分析し可視化することで、意思決定に必要な知見を素早く得ることができるツールです。

表:主なBIツール(2020年7月現在)

ツール名

提供企業

URL

Googleデータポータル

Google

<https://datastudio.google.com/>

Tableau

TABLEAU SOFTWARE

<https://www.tableau.com/ja-jp>

QlikView

Qlik Technologies Inc.

<https://www.qlik.com/ja-jp>

Power BI

日本マイクロソフト株式会社

<https://powerbi.microsoft.com/ja-jp/>

Datadeck

株式会社Ptmind

<https://www.datadeck.com/jp/>

SAP BusinessObjects Intelligenceスイート

SAPジャパン株式会社

<https://www.sap.com/japan/products/bi-platform.html>

Yellowfin

Yellowfin Japan株式会社

<https://yellowfin.co.jp/>

Oracle Data Visualization

日本オラクル株式会社

<https://www.oracle.com/jp/solutions/business-analytics/data-visualization.html>

ここでは、Googleデータポータルを例に挙げて紹介します。

Googleデータポータル

Googleが提供するBIツールで、以前はGoogleデータスタジオという名称でした。Googleアナリティクス以外にも、Google広告やGoogle Search Consoleなど、さまざまなデータをインポートして視覚化できます。

作成したレポートは、期間設定や項目などを自由に操作することができ、利用者によって自由にカスタマイズできる点も魅力です。Googleスプレッドシートと組み合わせると、より自由な表現が可能になります。

データマイニングツール

蓄積したデータをさまざまな角度から解析して課題や問題点や解決策を発見し、未知の関係・傾向などを探すことができるツールです。その分析には、クロス分析、相関分析、回帰分析などの手法が用いられます。

そして、導き出されたデータをもとに仮説を立て、具体的な施策につなげます。例えば、休日のネットショップ利用者数が大幅に減少していたデータと、天気や時季が密接に関係している、といったことを導き、ここから施策を検討することができます。

8-4-2. 課題管理表による施策の管理

行動を促す提案だけでは十分ではありません。採用、保留、中止になった課題を管理することは、ウェブ解析士の重要な役割です。課題管理表を作り、ミーティングで定期的にチェックを行って、施策の管理をしましょう。

施策管理の方法

施策管理の方法として、以下のキーワードを紹介します。これらはソフトウェア開発などで頻繁に用いられますが、ウェブ解析における施策管理にも応用できます。

ウォーターフォールでの管理

はじめに工程や期間を明確にし、1つひとつの工程が終了してから次の工程に進む方法です。工程が明確になりやすいメリットがありますが、工程の後戻りが難しい、あるいはスケジュールに遅れが発生した場合、スケジュールを組み直す必要があるなどのデメリットがあります。

アジャイル型での管理

施策を実施する際、さまざまな要因や顧客の要望を取り入れながら細かいサイクルで反復(イテレーション)を行い、そのサイクルの中で施策を実施していく方法です。施策の変更に柔軟に対応できる一方、全体像を把握しにくくなる、あるいは当初立てた施策から大きくずれることがあります。

また、KPT(Keep Problem Try)は、アジャイル型における「振り返り」の手法として知られています。取り組んでいる活動を振り返り、Keep(維持すること)、Problem(課題)、Try(解決策)の要素に分けることで施策を実施するチーム全体の改善につなげることができます。

課題管理の見える化・共有の仕方としてのかんばん方式

かんばん方式は、施策を実施するチームの状態やプロセスを視覚化することで、関係者が全体像を理解しやすくする管理方法です。ウォーターフォール型、アジャイル型どちらの方法でも活用できます。

課題管理ツールの活用

手動で課題管理表を管理する代わりに、課題管理を行うツールもあります。課題管理表だけでは対応できない、納期遅れを知らせるメールや担当者の割り振りなどの機能があります。

Redmine

<https://www.redmine.org/>

オープンソースのプロジェクト管理ツールです。ソフトウェア開発やウェブサイト制作などのITプロジェクトに多く使われていますが、汎用性が高いため、幅広い用途に活用できます。作業をチケットとして登録して担当者や納期を決めたり、タスク管理をするガントチャートも作成できます。

Backlog

<https://backlog.com/ja/>

有償のプロジェクト管理ツールです。ガントチャートやバージョン管理システムのほかにも、アバターやスターを付けるなど、コミュニケーションを強化する機能が揃っています。

Trello

<https://trello.com/>

タスクのカードをボードに貼り付けるように管理できるツールです。拡張機能や他サービスとの連携機能を利用することでカスタマイズできます。

8-5 ウェブ解析における統計基礎

企業が統計学を重要視する傾向は、年々高まりを見せています。ハード面でのクラウド化やソフト面での低価格化が進み、以前と比べると解析環境の構築ハードルが急速に下がっています。

ウェブ解析士が、データを用いて事業の成果につながる行動を促すためには、そのデータの特徴を的確に表現するための知識が必要となります。

また、クライアントや社内の関係者に対し、目の前のデータの状況を正しく開示して理解を得るためには、統計学の知識をもって提示することが必要不可欠となってきています。

統計学は、データが持つ背景や分布条件をもとに十分な知識をもって利用しなければなりません。そのための第一歩として、基本統計量によるデータの特徴を適切に表す方法や、さまざまな相関関係、比較したいデータに差があるかを統計的に検定する手順について理解しておくようにしましょう。

8-5-1. 記述統計推測統計

記述統計とは、集めたデータの特徴を捉えるために研究された分野です。一方、推測統計とは、母集団(統計対象の条件に当てはまるすべての集合のこと)から抽出した標本集団母集団から抽出した一部分の集団のこと)を用いて母集団を推定することを研究した分野です。本来知りたいと思っている集団全体のことが母集団で、標本集団母集団の情報を推測するために選ばれた一部の集団です。

例えば、ある学校Aにおいて小学1年生の身長測定を行ったとします。この学校の平均身長を出すのは記述統計の考え方になります。この学校Aのデータから全国の小学1年生の平均身長を出すには、全国の小学1年生の数を推測しなくてはならないため、推測統計の考え方になります。

つまり、学校Aのデータが標準集団に当たり、全国の小学1年生が母集団に当たります。

この例を読んで多くの人は、学校Aのデータだけで全国平均は推測できないような気がすると思います。統計学の観点からいえばこれに関しては正解でもあり不正解でもあります。ただ、少なくとも推測統計の基本的な考えとして母集団から標本集団を抽出する際はランダムサンプリングするという原則があります。乱数などを用いて恣意的に標本集団を抽出しないという原則です。学校Aがランダムサンプリングに基づき抽出されているのであれば、標本としてふさわしい集団であるといえるからです。

標本集団を用いたデータの解析では、その抽出方法がランダムサンプリングであるか、恣意的な操作がないか注意してください。

例えば、47都道府県の調査で全県ランダムに100件ずつ標本にすると、東京都の人口が多いにも関わらず地方の標本のほうが抽出される割合が高くなるため、都道府県別の調査ではふさわしい標本集団でも、日本全国を知る標本集団としてふさわしくないことになります。

8-5-2. 記述統計に用いる統計量の算出

記述統計は集めたデータの特徴を捉えるために研究された分野です。このデータの特徴を要約した数値を統計量と呼びます。統計量の中には、皆さんに馴染みの深い算術平均などがあります。本節では、統計分析において活用することが多い統計量について記述します。

平均値

平均値というと、算術平均を指すイメージを持っている方が多いと思います。算術平均とは、データの総和をデータの個数で割った値です。例えば、A社のリードジェネレーションサイトで1年間の問い合わせ数が[表:A社の問い合わせ数]のようであったとします。これを用いて、各変量を見てみましょう。

この場合の平均値は、「(13+12+14+10+3+9+2+1+7+9+8+9)÷12=8.1」となります。

この例では、12個のデータを算術平均しています。

表:A社の問い合わせ数

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

A社

13

12

14

10

3

9

2

1

7

9

8

9

平均を考える場合、気を付ける点が2つあります。1つ目は、どの集団の平均値を出すのがよいか、そして2つ目は、平均値はその集団の中にいる高い・低いがならされた数になるので、実際のボリュームゾーンがどこにあるかわかりにくいということです。

一つ目の例として、大学Aにおける男女の握力のデータが直近5年分あるとします。男女比率が1:1の場合、縦軸に握力の度数、横軸に握力となるようなヒストグラムを描くとします(ヒストグラムとは、縦軸に度数、横軸に階級をとった棒グラフで、データの分布状況を視覚的に表現するために使われます)。男性集団の山と女性集団の山が2つ描かれることが多くなります。このデータに対して平均をとると、大学Aにおける握力平均としては正しいかもしれませんが、データの特徴を捉えるのであれば男女別に平均を出すほうが年数経過の特徴を捉えるのが容易になります。なぜなら、入学年度によって男女比率が変わるような場合、学生の握力が直近5年で変化しているのか、男女比率によって平均が変わったのかがわかりにくくなるためです。

二つ目の例としては、業種の平均年収などが挙げられます。同業種で働いているのに平均に比べて年収が少ない人が多いと感じる業種が多く存在します。これは、ある一部の高給をもらっている人によって平均が上げられるからです。ウェブ解析のシーンではデータの平均値をよく使いますが、知りたいことに合わせて、平均値ではなく、例えばボリュームゾーンを知りたいときは最頻値がわかるヒストグラムを使うなど、しっかり検討しましょう。

最頻値

データ群で最も高い頻度で出現する値です。[表:A社の問い合わせ数の分数]の例でいうと「9」が最頻値になります。この例でヒストグラムを記載すると[表:A社の問い合わせ数の分数]のようになります。

この図を描いた際に、山が一番高いところを図だけでなく数値として表したのが最頻値になります。

最頻値の問題は2つ以上の最頻値がありうることです。1つの数値にしたい場合、最頻値は用いられません。

図:A社の問い合わせ数のヒストグラム

図:A社の問い合わせ数のヒストグラム

中央値

データを昇順に並べたとき、中央に位置するデータの値です。データが左右非対称にバラツキがある場合、そのデータの中央を表します。「メディアン」「メジアン」「中間値」と呼ばれることもあります。

[表:A社の問い合わせ数の分数]のお問い合わせ数を昇順に並べると、(1,2,3,7,8,9,9,9,10,12,13,14)となり、6番目と7番目の平均を取って、「(9+9)÷2=9」となります。

最小値・最大値・レンジ(範囲)

データ群の中で最も小さい値を最小値、最も大きい値を最大値といい、その差をレンジ(範囲)といいます。この値が大きいほど、バラツキが大きいことを表します。[表:A社の問い合わせ数の分数]では、最小値は1、最大値は14となり、レンジは「14-1=13」となります。

分散

個々のデータが平均からどの程度バラツキがあるかを表す値です。各値()と平均()との差(偏差)を2乗した総和( )を、データの個数()で割った値です。

A社の問い合わせ数の分散は、[表:A社の問い合わせ数の分数]のようになります。同じ平均値であっても、分散の値が大きければ、データとしてバラツキが大きいことを示します。品質管理においては、バラツキを小さくすることも改善策の1つです。

なお、母集団標本集団自体の分散を計算する場合は前述の式で算出しますが、標本から母集団の分散を推定する場合には、データの個数から1を引いた自由度(=データの個数-1)で割ります。これを「不偏分散」といいます。Excelの「基本統計量」で計算される分散は、不偏分散の値です。

表:A社の問い合わせ数の分数

表:A社の問い合わせ数の分数

標準偏差

分散の平方根です。分散は2乗された値で単位も変わるため、平方根を取り、単位を元に戻したものです。A社の問い合わせ数の標準偏差は、=4.03となります。標本が正規分布(後述)に従う場合(標本数が十分に大きい場合は正規分布に近づきます)、平均値に対して、標準偏差は次の性質を示します。

  • 平均値±1σの範囲内に、標本の約68%が含まれる
  • 平均値±1.96σの範囲中に、標本の95%が含まれる
  • 平均値±3σの範囲中に、全体の約99%が含まれる

この例では、[図:A社の問い合わせ数のヒストグラム]に示したヒストグラムによって正規分布からは若干かけ離れた分布となっていることがわかっていますが、平均値(8.1)±1 (4.03)=4.07~ 12.13の区間に含まれる標本は7個となり、約58%しかありません。

このようなバラツキの確認や、日々の異常値を発見するきっかけとして、分散や標準偏差を活用できます。

基本統計量は、Excelのアドインである「分析ツール」 <https://support.office.com/ja-jp/article/excel--6a63e598-cd6d-42e3-9317-6b40ba1a66b4>で容易に求めることができます。

平均値・最頻値・中央値の関係性について

極端に大きい、小さいデータが含まれるデータでは、平均値だけでは判断を誤ることがあります。その場合は中央値や最小値・最大値・レンジを確認しましょう。例えばウェブサイトの滞在時間などは1秒に満たないセッションと30分近いセッションがあるので、平均値だけでは正しい判断ができないことがあります。

平均の項にも記載をしましたが、左右対称かどうかを判定するのにこの平均値・最頻値・中央値の関係を見ることによりある程度分かります。もし、左右対称で山が1つしかないようなデータ(厳密には正規分布の場合)はこの3つの指標が完全に一致するとされています。

8-5-3. 主な分布

数理統計学においてはさまざまな分布が研究されています。本節では、主な分布の説明をしますが、分布を知っているとデータの全体感を捉えるのに役に立つため、ここで説明した分布以外も調べることをお勧めします。

正規分布(normal distribution)

数理統計学(数学的統計は、統計学データを収集する手法とは対照的に、数学の分岐である確率論を統計学に適用するもの。)では、この分布を知らないと何も始まらないといっても過言ではありません。正規分布とは、平均値あたりにデータが集約する連続値の確率分布です。8-5-2でも記述しましたが左右対称で山が1つだけの分布になります。後述する検定の多くは母集団が正規分布に従っていることを仮定した上で行うものが多くあります。詳しい定義は割愛しますが、解析データの集団やその母集団が正規分布に従っているかについては確認することが必要になります。一般的に正規分布に従うものとして身長分布などがあります。なお、正規分布を表す統計量としては、母平均のと母分散のがあります。なお、標準偏差の項で「平均値±〇 」という記述がありましたが、正規分布に従う分布のときだけ当てはまる記載となります。

二項分布(binomial distribution)

二項分布とは、ベルヌーイ試行をn回行った際に確率pに従った際に成功する確率分布です。ベルヌーイ試行でよく使われる例としてコインの表が出るかどうかという例があります。コインの表が出る確率が50%だとしたとき、10回投げたときに(1回,2回,・・・,9回,10回)表が出る確率を表すと二項分布になります。

二項分布とは、ベルヌーイ試行をn回行った際に確率pに従った際に成功する確率分布です。ベルヌーイ試行でよく使われる例としてコインの表が出るかどうかという例があります。コインの表が出る確率が50%だとしたとき、10回投げたときに(1回,2回,・・・,9回,10回)表が出る確率を表すと二項分布になります。

二項分布を表す統計量は、試行回数と確率になります。なお、期待値は、分散は となります。確率50%のコインを10回投げたとき、期待値(平均)は5回となり、分散は2.5となります。この分布を用いる典型例としては、あるバナーのCTRが0.5%とわかっているときに1000人ランダムに集客できたとしたら、5人クリックしてくれる率はどの程度かを想定する際に使います。運が悪く3人しか取れない確率や、運良く7人取ることができる確率が計算できることにより、リスク把握をしながら施策を回すことができます。ただし、この計算をする際にCTRが仮定の数字であるということを忘れてはいけません。まれにしか起きないことが何度も起きる場合はCTRが間違っているという仮説を立てられます。

8-5-4. 推測統計に用いる統計量の算出

8-5-1で記述した通り推測統計とは、母集団から抽出した標本集団を用いて母集団を推定することを研究した分野です。推定をするということは、必ず母集団を全調査したときと同じ値になるわけではないが、標本集団から計算した値が近しい値になるはずだというのが理論の根幹にあります。ここで必要なことは「どの程度の確率で近しい値になるか」まで考えておくことです。本節では、記述統計で用いた統計量との関係や推測統計独自の考え方の1つである区間推定を学びましょう。

期待値と分散(標準偏差)

推測統計における期待値とは、記述統計における平均値と深く関係のあるものとなります。例えば、正規分布の場合、標本集団の平均をと表し母集団の平均をと記述することが多いです。また標本集団の分散を母集団の分散をと記述することが多いです。母集団や母分散が既知の場合と未知の場合で取ることができる手法などが変わりますので、推測統計をする場合は、母集団の平均や分散がわかっているかについては意識してください。母集団の平均などわかるはずがないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「あるお店ではマニュアルとして○○グラムのご飯を提供する」などがわかっている場合は、全員(母集団)に○○グラムのご飯を提供していると考え、基本的には母平均が既に分かっている値であるとして統計処理を行うことが可能になります。

点推定と区間推定

実際に正規分布に従う母集団標本集団からどのように推定するかについて平均を用いて説明をします。

まず、標本集団から母集団の平均をある1点で推定する点推定について説明します。点推定を求めるには、8-5-2の平均の項で記載した算術平均で求めます。ここで推定した値に関する信頼について考えてみます。

例えば、全国から成人男性100人をランダムサンプリング(以下、抽出はランダムサンプリングを指します)し身長測定を行ったとします。その結果、点推定の結果が171.3cmだったとします。では、再度全国から成人男性100人と抽出した場合全く同じ結果が出るでしょうか。答えとしては、同じ結果が出る可能性がありますが、かなり低い確率になることが考えられます。身長測定を行うと小数点第一位まで計測されることが多いですが、測定精度が高い機器で測ることが可能であれば小数点以下は延々と続きます。よって、全く同じ値が出る可能性は非常に低いです。ただ、再抽出したときに平均190cm台と平均170cm台が出る確率のどちらが高いということを考えたとき平均170cm台になる確率の方が高いというのは容易に想像ができます。

そこで、この考え方を表すこととして使われるのが区間推定です。8-5-2の標準偏差で登場した点推定と同じような式になります。

区間推定=点推定±1.96(信頼区間95%)

上式は、点推定の値から1.96 の間に入る確率は95%になることを表しています。つまり、成人男性100人から点推定、並びに標本標準偏差を計算し上式に当てはめた値の区間に対し、再抽出して点推定をした際もその区間に当てはまるのは95%になると考えられるということです。あくまでも母集団を推定する際に用いるものですが、100%精度を出すためには全数調査するしかありません。しかし、それが不可能な場合において95%の精度でよければある程度推測できるようにしたのが、この区間推定の考え方になります。

分析する際に、対象データが全数だから記述統計をすれば良いのか、それとも母集団から抽出した標本集団になっており推測統計を用いればよいのかをきちんと見極めてください。また、推測しているのであればその代表値が区間推定にした際にどの程度の振れ幅があるのかについては常に確認する意識を持つようにしましょう。非常に高い値が出ても区間推定を調べてみるとかなり区間が広いことがあります。点推定だけで判断をすると思わぬリスクを背負うことがありますので注意してください。

A/Bテストでどちらかが優れているかという評価も、区間推定を用いることが一般的です。

8-5-5. 相関係数

2つのデータの相関関係を見る際、散布図を作成すると便利です。散布図を見るときは、単に分布具合を見るだけでなく、相関係数(通常、「r」と表します)を見ることで、より信頼度が高まります。

相関係数rは、2変量(x, y)の分散値から求められ、-1から+1の間の値を取ります。+であれば正の相関、-であれば負の相関があることを意味し、相関の強弱には、次のような目安があります。

表:相関係数

正の相関

負の相関

相関の強弱

0<r≦0.2

-0.2≦r<0

ほとんど相関なし

0.2<r≦0.4

-0.4≦r<-0.2

弱い相関がある

0.4<r≦0.7

-0.7≦r<-0.4

中程度の相関がある

0.7<r≦1.0

-1.0≦r<-0.7

強い相関がある

算定式は複雑になるため、ここでは割愛しますが、Excelの「データ分析」にある「相関」で、簡単に求めることができます。散布図を作成した場合、グラフの設定で近似グラフと併せて「」を表示させることができます。は、相関係数rを二乗した値で、rが0.7以上の場合、は0.5を超えるようになります。散布図から相関の強弱を判断する場合は、が0.5以上あるかどうかを確認するのも1つの方法です。

ただし、相関関係を分析する際、最低限注意しなくてはならないことが二つあります。1つ目は、外れ値についてです。相関係数に関して計算式は割愛しましたが、データの中に外れ値があるとそのデータに引っ張られてしまい相関係数が誤って高い値になることがあります。よって、必ず散布図を描き外れ値がないかの確認をしてください。外れ値がある場合は、単純に取り除いて計算するだけでなく、異なる特徴を持った集団を同時に描いてないか等の考察も忘れないようにしましょう。2つ目は、疑似相関です。疑似相関にはいろいろな例がありますが、各都道府県における警察官数(A)と犯罪発生件数(B)の相関分析を行うと年度によって相関関係が見られるのもその一例です。ここに相関関係から「警察官の数を増やすと犯罪発生件数が増えることが考えられる」という結論は出せるでしょうか。もちろんそんなことはなく、実際には各都道府県人口(C)に応じて犯罪発生件数や警察官数は増えています (地域によって犯罪発生率が低いところもありますが)。つまり、AとBの相関関係があるからといって直接的に相関があるわけではなく、(A,C)と(C,B)に相関があるため(A,B)に相関があるように見えることを疑似相関といいます。つまり相関関係を分析する際、ただ数値を求めて判断するだけでなく、そのデータが発生する経緯なども考察しないと間違った考察をすることがありますので気を付けてください。

8-5-6. 統計的仮説検定

施策を行った際に、既存施策と新規施策を比べた際に差があるのかなどの考察をする必要が出てきます。その際には統計学の「検定」が用いられます。検定には、そのデータの抽出条件や適用する分布の種類によってさまざまな方法があります。しかし、検定の手順についてはどの方法でも共通なので、ここではその手順について説明します。

データの諸条件の確認と検定方法の決定

検定を行いたいデータが平均値か分散か確率か、またデータ自体が母集団か標本かどの分布に従うかなどの諸条件を確認し、それぞれにあった検定方法を決定します。

帰無仮説および対立仮説の決定

帰無仮説

検定を行うデータ同士には「差がない」として仮説を立てます。この仮説は棄却されることを期待されており、「最終的には無に帰されます。」で表します。

対立仮説

帰無仮説に対して「差がある」という仮説で表します。

検定の結果、が棄却された場合、対立仮説であるがが採択されます。が棄却されなかった場合は、が採択され、 が棄却されます。

有意水準と棄却域の決定

有意水準とは「その結果が起こる確率を何%まで許容するか」を表す水準値のことです。最もよく見る値は95%とするケースで、この場合の有意水準は、100%-95%=5%=0.05となります。さらに厳密に差があるかを検定したい場合は、99%の確率を水準値とする場合もあり、この場合の有意水準は、100%-99%=1%=0.01となります。この有意水準をもとに、検定方法に合わせた分布図から、仮説の棄却域を決定します。

統計量の算出と棄却域との比較

仮説を検定するために必要な統計量を、検定方法に従って求めます。

統計量が棄却域以上の場合

「差が有意水準を超える範囲で発生した」ものとし、差がないという帰無仮説は棄却され、が採択されます。

統計量が棄却域を下回る場合

「差が有意水準を超えない範囲で発生した」ものとして、差がないという帰無仮説が採択され、は棄却されます。

A/Bテストでどちらのページが優れているかを調べる手法が検定です。AとBは差がないという帰無仮説に対し、差がないとは判断するには無理があるということで帰無仮説を棄却し、差がある=どちらかが優れているという判断をします。ツールが出力する結果を鵜呑みにせず、その理論を理解しておくようにしましょう。

8-6 グローバルでのレポーティング

海外向けのウェブ解析レポートを作成することになった場合、「最初に何をすべきなのか」といった突破口の作り方から、具体的な作成手順について紹介します。

8-6-1. 最初にやるべきことは「まわりに相談すること」

経験のないことをやろうとしたとき、もっとも効果的なアクションは「まわりに相談すること」です。

上司や依頼主に対して、レポーティングをする目的、提出先、書き方の形式といった、背景情報を細かく聞くことから始めてください。その上で、過去に似たようなレポーティングをしていれば参考資料としてもらえないか、アドバイスをしてくれそうな人とつないでもらえないか交渉してみましょう。

情報収集が難しいと思ったときは、ピンポイントではなく、周辺情報から網羅的に集めていくようにしてみると、突破口が作りやすくなります。今回の場合、一番欲しい情報は①の「海外×ウェブ解析×レポーティング」ですが、②のように「海外×ウェブ解析」「海外×レポーティング」「ウェブ解析×レポーティング」と視野を広げることで情報を集めやすくできますし、必要な情報の全体像も見えてきます。

8-6-2. 「言語」や「文化」の違いを知る

次は、レポートを提出する国と日本の「言語や文化の違い」について、簡単に研究してみましょう。目的は、その国の人を観察し、著書やインターネットなども活用しながら相手を知ることで、コミュニケーションにおける「すれ違い」の確率を減らすことです。

「カルチャー・マップ(文化の見取り図」(『異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』エリン・メイヤー[著]、樋口武志[翻訳]、田岡恵[監修]、2015、英治出版)を活用しましょう。このマップでは各国の違いについて、事例と特徴を以下8つの指標から知ることができます。

カルチャー・マップの8つの指標

『異文化理解力』P32より引用

① コミュニケーション:ローコンテクストVSハイコンテクスト

② 評価:直接的なネガティブフィードバックVS間接的なネガティブフィードバック

③ 説得:原理優先VS応用優先

④ リード:平等主義VS階層主義

➄ 決断:合意志向VSトップダウン式

⑥ 信頼:タスクベースVS関係ベース

➆ 見解の相違:対立型VS対立回避型

⑧ スケジューリング:直線的な時間VS柔軟な時間

8-6-3. 日本と海外のレポーティングにおける「共通点」と「違い」

レポーティングの「共通点」ですが、基本項目は日本と同じです。8-1「ウェブ解析レポートの種類と流れ」を参照してください。

日本と海外のレポーティングにおける違い

今回はアメリカの事例を中心として、グローバルでマーケティングレポートを作成する際の注意点をご紹介します。

レポーティングの主目的
  • 主なターゲットは株主や投資家
  • ビジネスインパクトが伝わる

日本では社内やクライアントに対して行うイメージが強いと思います。しかしアメリカでは、レポーティングの主なターゲットは株主や投資家である場合が多くあります。自分たちの事業をアピールしたり、提携の打診をしたりする目的で作成されるため、ビジネスインパクトが伝わるレポートが求められます。

従って、「○○が上がりました(下がりました)、その理由は○○です。」といった状況を説明するようなレポートではなく、「利益につながる指標」が示された上で、「だからどうするのか? (結論と施策)」が具体的に書かれていることが重要です。また、掲載するデータは、次の施策を考える上で必要なものだけに絞り、極力シンプルにします。

商習慣・文化の違い
  • セールスデータも踏まえたレポートが求められる
  • マーケターはシステムスキルも持っていることが大前提

B to Bの場合、ウェブサイトからお問い合わせが○件ありました、という情報に加えて、質はどうたったのか、セールスサイクルにのったのか、といったセールスデータも踏まえたレポート作成を求められます。これは、日本とアメリカのマーケティング文化の違いで、インサイドセールスとマーケティングが親密な関係にあることが起因しています。

また、社内のメンバーだけで行う役員会議では、レポートの代わりにダッシュボードで会議が進行されるケースが多くあります。その際、アメリカのマーケターはデータエンジニアの側面も持っているので、APIで異なるツール同士をつないでダッシュボードを作ったり、SQLを書いて分析したりするシーンが業務の中で登場します。前提として、マーケターがシステムスキルを持っていることが多いのも、日本とアメリカの違いといえます。

システムスキルがある人にとっては、ダッシュボード作りの方が楽そうに思えるかもしれません。しかし、ダッシュボードを使う場合は口頭での説明が必要になってくるので、語学力が求められます。どんなに英語が堪能な方でも、ネイティブと比較されたら厳しい勝負になると思いますので、レポーティング力もしっかり磨きましょう。

グローバルでマーケティングレポートを作成する際の注意点
  • 数字が出された経緯や、抽出条件を丁寧に確認する
  • 解析ツールの設定を拠点間で同期しておく

グローバルでマーケティングレポートを作成する際は、各国の担当者と分担して1つのレポートを作っていくこともあるので、背景の確認や連携が非常に重要になってきます。例えば、ここに記載されている数字はGoogleアナリティクスから出した数字なのか、それともMAやCRMなどの他ツールから出しているものなのかなど、認識がずれないように抽出条件を1つ1つ確認することが差し戻しを少なくするコツです。

また、複数の解析ツールを使ってデータを出すことになるので、拠点間で設定がばらついてしまうと、同一基準のフォーマットで数値入力ができない問題や、そもそも数値を取得していなかったという問題が発生してしまうこともあります。よって、解析ツールの設定を拠点間で同期しておくことが非常に重要です。

8-6-4. レポートの作成手順

見せるデータはよりストレートで、コメントはしっかり(口頭での補足がなくても理解できる)したレポートを書きましょう。大きな流れは以下の通りです。

Step1:主要なビジネス課題(primary business concerns)を発見する

Step2:課題に対してあらゆる角度(angle)から情報を探す

Step3:話の中核(core narrative)ではない情報を外す

Step4:レポートのストーリー(story)を作る

Step1

みなさんの仕事は、Googleアナリティクスの翻訳家ではありません。主要なビジネス課題を発見して、より良い意思決定を行うために役立つデータを提示することです。そのためにも、冒頭でお話したような社内の情報収集も活用しながら、主要なビジネス課題を見つけることに全力を注いでください。

Step2

ビジネス課題(=問い)が決まったら、この問いに対して答えとなりうるデータをあらゆる角度から探していきます。この時点では、まだレポート作成は手を付けないでください。Googleアナリティクスのセグメントなどを活用しながら、さまざまな角度からデータを見ることで、気付きや情報を集めることに集中します。

Step3

情報が集まったら、話の中核となる情報以外は、思い切って消していきます。そうすることで、読み手によそ見をさせることなく本筋へ導くことができます。また、レポートから削った情報も、「こういうインサイトがあったな」ということは、自分の頭の引き出しに取っておくと、別の角度でレポートを作る際に役立つことがあります。

なお、レポートの本筋とは関係ない部分で、特別にセッション数や直帰率が高かった日など、いわゆる「目に留まりやすいデータ」がある場合は、少し注意が必要です。読み手や聞き手の目線がそれやすくなるので、事前に要因を推察し、必要に応じてコメントを入れておいたり、質問があった場合は手早く答え、本筋に戻れるようにしておきましょう。

Step4

ここまでできたら、あとはストーリーをまとめていくだけです。フレームワークは、「A-B-T(And-But-Therefore)」や、「The 5 C’s of storytelling(Circumstance、Curiosity、Characters、Conversations、Conflict)」など、レポートの目的や読み手に合わせて伝わりやすいものを活用してください。

また、グローバルで仕事をする場合、時差の問題が必ず出てきます。よって、レポートを元に説明する前提ではなく、レポートを読むだけで理解できる内容に仕上げておくことが重要です。もちろんプレゼンテーションがある場合は、発表練習も十分に行いましょう。

8-6-5. グローバルサイトを分析する5つのポイント

5つの観点から日本語のサイトとグローバルのサイトを分析する際の違いを見てみましょう。

1:英語サイトの場合は対象が「米国人」だけとは限らない

英語サイトの場合、米国や英国からの訪問だけとは限りません。以下は米国に本社を有する医療機器会社の、ウェブサイトの国別訪問数です。

見ての通り米国からの訪問は全体の半分以下にすぎません。また国ごとに行動パターンが違うということも見えてきます。グローバルサイトの分析を行う際にはまずは国ごとに違いがないかを確認しましょう。

図:ある医療機器会社ウェブサイトの国別訪問数

図:ある医療機器会社ウェブサイトの国別訪問数

2:祝日の違いに気を付ける

以下は「米国」と「日本」の日別訪問数です。

図:「米国」と「日本」の日別訪問数

図:「米国」と「日本」の日別訪問数

3週間のうち、真ん中の週だけ山がないことに気付くかと思います。日本ではこの期間はゴールデンウィークになりますが、米国にはそのような連休はありません。このように国ごとの祝日や連休、休みの取り方によって数値が変わります。

主要な祝日に関しては把握の上、分析を行うとよいでしょう。日本貿易振興機構(JETRO) <https://www.jetro.go.jp/world/holiday.html>が提供している世界の祝祭日のページなどを参考にしましょう。

3:サイトの作り方が違う

以下はTOYOTAプリウスの「特徴」の日本語と英語のページです。

図:プリウスの「特徴」ページ 日本(上)

図:プリウスの「特徴」ページ 米国(下)

図:プリウスの「特徴」ページ 日本(上)米国(下)

日本のサイトは文章や情報が多く、「販売店へ行く」「WEB見積り」「販売店に質問する」というリンクがフッターで追尾してきますが、米国はそのようなリンクはなく、文章も少なめとなっています。このように国によってサイトの作り方は変わってきます。他にも日本と海外サイトの違いを見てみるとよいでしょう。

一般的な傾向としてですが、このような違いがあります。なお日本語・英語としていますが厳密には「アジア圏」と「英語圏」と置き換えても問題ありません。

表:日本語・英語でのサイト傾向

日本語

英語

情報を詰め込む

情報量は絞り込んでいる

レイアウトが細かい

レイアウトがシンプル

導線は多め

導線は少なめ

どこからでもCVへ誘導

CVへの誘導も限られている

口コミを重視

口コミは限られている

画像を使いがち

動画を使いがち

それぞれの国にあったウェブサイトの作りや分析が必要になるということです。基本的にアジア圏に関しては「たくさんの情報からしっかり吟味して判断した上でお問い合わせを行う」という傾向があり、英語圏に関しては「まずはざっくりつかんで、とりあえずお問い合わせやチャットで聞いてしまう」という違いがあります。

両者の違いを一言でいうのであれば「コミュニケーションに関しての慎重さ」かもしれません。アジア圏の場合は不安を取り除いた上で、良さをしっかり伝えることが重要ですし、英語圏の場合は想像力に任せて各自で判断してもらうという側面があります。

Googleアナリティクス等のアクセス解析ツールのデータは「ページの滞在時間」「見ているページの違い」「再訪回数」などが国よって変わるかもしれませんので、分析の際はこの辺りを意識してみましょう。

4:レポート作成は文章力が必須

運用や改善提案レポートを作成する際、海外のレポートで求められるのは「要点をしっかり文章で書くこと」です。レポートは文章多めでしっかり書き込む傾向があります。

それは時差の都合で全員が「報告会」に参加できないケースが多いからです。しっかり文章で書くことが大切です。以下はある月次レポートのサマリーシートになります。

図:海外のレポートの例

図:海外のレポートの例

日本語と比べると「漢字」がないため、1つの事象を説明するのに、文字数としては長くなりがちです。同じことを伝えようとしてもそれだけスペースを使ってしまうことは意識しておく必要があります。だからこそ、書く内容は「要点」に絞る必要があります。

Amazonでは、社内レポートはすべてWordファイルで、表やグラフはほぼなく文章で淡々と事実とその背景を書いていくスタイルです。そして打ち合わせの最初に全員が文章を読むだけの時間が設けられていました。

書き手にとって負荷は大きいのですが伝えるべきポイントが整理されますし、読み手の解釈に委ねる要素が減ります(その結果、誤解が起きにくい)。後で共有もしやすく、大変ではありますが有効な手法でした。

5:報告を行う際もすべてを説明する必要はない

複数の国にまたがって拠点がある場合、レポートの報告会はオンライン会議や電話会議になります(これは2020年現在のコロナ禍において、日本でも該当します)。

こういったオンライン会議での報告会を行う際には以下の点に気を付けるとよいでしょう。

  • 資料の事前送付は必須。画面共有では資料は見えにくいため、自分のタイミングで確認できないと負荷を感じてしまう
  • 説明になるべく時間を使わない。最大でも30分を意識して要点だけを説明するとよい。要点とそれ以外のスライドは明確に分けている
  • どこを説明しているかを指し示す。「Please see the 3rd row of the table showing bounce rates of each traffic channel」というように、特に重要な内容を説明する場合は必ず伝える
  • 質問に関しては説明が終わってから受ける(日本人以外は)遠慮なく質問してくるケースが多く、時間通りに説明が終わらなくなるリスクがある