2021年ウェブ解析士(日本語)テキスト

7. 第6章:エンゲージメントと間接効果

第6章
エンゲージメントと間接効果

あなたは、広告の目的をインプレッション、トラフィック、レスポンスと明確にし、効果測定もできるようになりました。そんな中、ウェブ解析から、自分たちのサービス名で検索している人が減っていることに気付きました。

「なんでだろう、サービス名を検索してくれる人が減っているということは、もっともっと認知拡大の費用を増やせばいいのかなぁ……」

先輩からは、「ユーザーの立場に立って見るとわかるよ。君は、広告を一度見たら、その広告をクリックする? もし、クリックするならなんでクリックするんだろうね」

確かに、私自身、広告を見たからと言って、すべてクリックするわけじゃない。「そのときに興味があったらクリックするなぁ……」

「ユーザーに対して表示させるだけではなダメなんだ、でも、表示してクリックするか、しないかって、どんな風に考えればいいんだろう……」

またまた悩みが募りました。


第6章では、永続的な事業の発展に必要なエンゲージメントと、広告の成果を正しく理解するための広告の間接効果について学びます。

  • 「6-1. エンゲージメントを軸とした行動モデルと指標」では、エンゲージメントを高めるためのユーザー行動モデルを学びます。
  • 「6-2. 広告におけるエンゲージメントと間接効果」では、エンゲージメントを意識したインプレッションの方法や、ユーザーに対してどの広告が何回表示されてコンバージョンになったかという間接効果を学びます。
  • 「6-3. ソーシャルメディアにおけるエンゲージメント」では、商品認知と販売促進を行う際にユーザーとどのように接すると効果的かを学びます。
  • 「6-4. オーガニックサーチにおけるエンゲージメント」では、オーガニックサーチとエンゲージメントの関係性を学びます。
  • 「6-5. モバイルアプリにおけるエンゲージメント」では、モバイルアプリでのエンゲージメントの重要性と効果を高める手法を学びます。
  • 「6-6. 動画マーケティングにおけるエンゲージメント」では、動画の視聴数や視聴時間、UGCによるエンゲージメント改善を把握します。

6-1 エンゲージメントを軸としたユーザー行動モデルと指標

顧客獲得が重要視されてきたデジタルマーケティングにおいて、顧客体験を軸とした「ブランディングとエンゲージメント」の重要性が改めて見直されています。

6-1-1. エンゲージメントとは

「エンゲージメント」を直訳すると”約束、契約、債務、婚約”という意味ですが、デジタルマーケティング用語では、企業や商品・ブランドなどに対して顧客が「愛着を持っている状態」を表し、クリックやシェアすることを「エンゲージメント」と呼びます。以下で説明しますが、本来はそれよりももう少し長期的な概念であることも記憶しておいてください。企業やブランドは顧客からの愛着を高めるために、何を約束するのかということを認知して体験してもらうことが重要です

例えば、あるコーヒーショップが「このお店は非日常の空間と美味しいコーヒーを提供します」と約束したとします。顧客はそれに興味を持ち実際にお店に行ってみて、期待した約束と同じと感じる体験をすると、お店が提示した約束に対して共感し愛着を持ちます。もしその約束が守られなかった場合、あっと言う間に愛着がなくなり次に選んでくれなくなるかもしれません。一回きりの購入や問い合わせなどの直接的な成果を目的としてデジタルマーケティングに取り組むことも重要な活動の一つですが、あなたが手がける商品やサービスについて好意を持って、何度も選択して愛着を持つ、つまりファンになる顧客をデジタルマーケティングによって生み出せているでしょうか。

ユーザーからの共感を得るには、長期的な顧客体験を通じて関係性をよりよいものにしていく必要があります。最近では、過度な広告表示や、過度なSEO対策によって検索結果に対する信頼が薄れ、検索エンジンを活用しない層も生まれ始めています。一方で、ソーシャルメディアはユーザーとコミュニケーションする接点として欠かせないものになりました。

このような顧客接点の多様化の中でユーザーからの共感を得るには、長期的な顧客体験を通じて関係性をよりよいものにしていく必要があります。こうした活動によって生まれる、企業や商品・ブランドなどに対してユーザーが「愛着を持っている状態」を継続させていくことが必要なのです。

図:エンゲージメントを作る

図:エンゲージメントを作る

デジタルマーケティングの中でのエンゲージメントの作り方は、顧客との交流がキーポイントになります。交流といっても会話などのやり取りだけではありません。広告やインセンティブキャンペーンなどでオウンドメディアに新規ユーザーを集めるだけでは、長期的な共感は得られません。ソーシャルメディアを中心としたユーザーとの積極的な交流によって、ファン化させていき、エンゲージメントを高めることが重要なのです。

例えば、Facebookでは「いいね!」やコメントの数、シェアした人数やページのリンクや画像をクリックした回数などがエンゲージメントの指標となります。コンテンツの内容に「共感できる」「拡散したい」と感じたユーザーが多い状態が、「エンゲージメントが高い」状態だと考えられます。

6-1-2. 行動モデルと評価指標

顧客にファンになってもらうためには、その心理や行動の変化をトレースする行動モデルの理解が不可欠です。

行動モデルとして有名なAIDMA(アイドマ) <https://ja.wikipedia.org/wiki/AIDMA>は1920年代、マスメディアが浸透しはじめたアメリカで登場しました。このAIDMAが長らく消費者の行動モデルとして扱われてきましたが、時代や文化の発展により新しい行動モデルも登場するようになりました。

インターネットの誕生以降には消費者の行動が多様化し、AISAS(アイサス) <https://n2p.co.jp/blog/promotion_knowledge/what-is-aisas/>、AISCEAS(アイシーズ) <https://ja.wikipedia.org/wiki/AISCEAS>、SIPS(シップス) <https://ds-b.jp/media/pages/443/>など多くの消費者行動モデルが提唱されてきました。

このように消費行動のモデルは時代と共に変化してきました。これは消費者の生活様式や意識が変わってきたことが要因です。ここではネット環境に適応した、最近提唱されている消費者行動モデルを見ていきましょう。

DECAX(デキャックス)モデル

電通デジタル・ホールディングスの内藤敦之氏によって考案されたものでDiscovery(発見)、Engage(関係構築)、Check(確認)、Action(購買)、eXperience(体験と共有)からなります。消費者との関係性構築が特徴的な行動モデルです。

<https://n2p.co.jp/blog/promotion_knowledge/what-is-decax/>

Discovery(発見)

ユーザーが持つ興味関心に対し、コンテンツを発見する段階です。これまでのAIDMAやAISASといった消費者行動プロセスでは、企業側のアプローチによる「Attention(アテンション)」として「認知させる」プロセスが入っていましたが、DECAXでは「発見してもらう」とユーザー主体であることが特徴です。

Engage(関係構築)

発見した情報と併せて配信されているコンテンツに触れることで、関係性が構築されていく段階です。ここでは、複数回の訪問が必要なので、ユーザーからのメールマガジンへの登録やウェブブラウザのプッシュ通知の許可などを得ることが必要です。

Check(確認)

行動前に「そのコンテンツやサービスが本当に価値あるものか」を確認する段階です。ユーザーから、企業側からの一方的な広告配信だと思われると、これまで築いた関係が無駄になるため、信憑性やモラルには十分な注意が必要です。

Action(購買)

ここでは、実際に商品やサービスを手に入れる段階のことを指します。

eXperience(体験と共有)

商品やサービスそのものだけではなく、これまでの体験を共有する段階です。ユーザーがリピートしたり、継続して利用したいと思わせる体験づくりや、ユーザーがシェアすることをサポートする環境づくりが重要です。

図:DECAX(デキャックス)モデル

図:DECAX(デキャックス)モデル

ULSSAS(ウルサス)モデル

デジタルマーケティングファームである株式会社ホットリンクが提唱する消費者行動モデルで、UGC(User Generated Content)が起点となっているところが特徴的な行動モデルです <https://www.hottolink.co.jp/service/method/ulssas/>

UGC(ユーザー投稿コンテンツ)

ユーザーがSNSなどで商品やサービスを推薦する投稿をします。

Like(いいね!・リツイート)

UGCを見たユーザーが投稿に「いいね!」をしたり、リツイートをすることでさらに拡散されます。多くの人から評価の高いものはエンゲージメントが高くなりさらに拡散していきます。

Search1(SNS検索)

UGCを見たユーザーが、商品について興味を持ち、ハッシュタグを辿ったり、SNS上で検索をして情報収集をします。

Search2(検索エンジン)

オフィシャルな情報や商品の購入方法などを知りたいと思い、検索エンジンで指名検索をします。

Action(行動)

実際に商品やサービスを手に入れる段階です。

Spread(拡散)

購入した商品やサービスを感想や推薦コメントとともにSNSに投稿します。ここからULSSASのサイクルが回り始めます。

図:ULSSASモデル

図:ULSSASモデル

RsEsPs(レップス)モデル

一般社団法人日本プロモーショナル・マーケティング協会が2019年6月に提唱した最新の購買行動モデルです。どの段階においても「検索・共有・拡散」がされるということが特徴的な行動モデルです。

<https://jpm-inc.jp/wp/wp-content/uploads/Network2019_vol.101.pdf>

Recognition(認識)

CMやSNSなどで商品の存在を知り興味を持ちます。

Experience(体験)

店舗で商品を手にとったり、ポップアップストアでサンプルをもらったりして、実際に商品を体験します。

Purchase(購買)

実際に商品やサービスを手に入れる段階です。

Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)

検索エンジンやSNSで検索する、SNSでハッシュタグをつけて投稿するといった行動で、順を追って訪れる段階ではなく、「Recognition(認識)」「Experience(体験)」「Purchase(購買)」のどの段階でも発生します。

インターネットの登場によって大きく変わった行動モデルですが、近年はSNSを中心に検索やクチコミ、拡散といったユーザー主体の行動がまた他のユーザーを動かすといった行動モデルが主流となっています。つまり顧客をファン化することが重要なのです

図:RsEsPsモデル

図:RsEsPsモデル

NPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)®

NPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)®は、ニューヨークタイムズのベストセラー作家、ビジネス戦略家のフレデリックF.ライヘルドが提唱した、顧客ロイヤリティ、顧客の継続利用意向を知るための指標です。

「NPS®」とは

ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤリティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する。ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そしてNPS関連で使⽤されている顔⽂字は、ベイン・アンド・カンパニー フレッドライクヘルド サトメトリックス システムズの登録商標又はサービスマークである

これまでは顧客満足度を評価指標にするケースも多かったのですが、解約したユーザーの多くが「満足した」と答えていたり、「満足したと」回答したユーザーが優良顧客ではないことも多くありました。つまり、ブランド、商品、サービスの業績との関連性が低いのではないか? と考えたのです。

ここで、業績との関連性が高いこのNPS®に注目が当たり、評価指標として採用している企業が増えています。このNPS®には、以下のようなメリットがあります。

  • オンライン、オフラインにかかわらず、サービス全体の推奨度を知ることができる。
  • 回答がシンプルで回収率が高い。
  • 奨めるもしくは、奨めないの理由から課題解決のヒントが得られる。
  • 多くの企業が採用しているので相対評価ができる。

NPS®は、アンケートで「あなたはこの商品・サービスを親しい友人や家族にどの程度奨めたいと思いますか?0 (奨めない)~10点(奨める)で点数をつけてください」と、「あなたは、なぜそのように思いましたか、可能な限り具体的に記入してください」と、理由を聞きます。

図:「NPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)®」

図:「NPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)®」

NPS®は[図:「NPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)®」]のように、点数によって「推奨者」「中立者」「批判者」に分けて次の式で算出します。

NPS®= 推奨者の数÷アンケート回答者数×100
   —批判者の数÷アンケート回答者数×100

スコアはマイナスになるケースも多いですが、スコア自体に一喜一憂するのではなく、サービスや品質の改善に活かし、定期的に計測して相対的な評価指標としてください

一方で、NPS®が正しく忠誠心を計測できないケースもあります。例えばネガティブな目的のコンプレックス商品やお得で他人に教えたくないサービスといったバイアスがかかる場合は正しく計測できなくなります。また初回購入時にNPS®を聞いても購入完了時点ではまだ商品を手にしていないので、評価が中立に寄ってしまうというケースもあるので注意が必要です。

6-1-3. ブランドリフトとサーチリフト

エンゲージメントを高めるための活動は長期におよびます。しかしながら、ブランドはユーザーにおけるあらゆる接点で得た印象の総和であるため、特にブランディング施策を行っていない状態でも、日々のユーザー獲得を目的とした広告やコミュニケーションによって築かれます。

ブランドリフト

当初はまったくサービスを認知していなかったユーザーでも、ソーシャルメディアの閲覧や検索行動によって商品やサービスを知り、やがて何らかの意欲が生まれた際にそのサービスを想起し、商品を探す行為が生じます。これを「ブランドリフト」と呼びます

ブランドリフトは、アンケートを用いて広告に接触したユーザーと接触していないユーザーを比較し、接触したユーザーのブランドの認知や購買意欲が向上しているかどうかを測る指標となります。広告には、静止画でのリスティング広告などだけではなく、あらゆるタイプ、メディアの広告が含まれます。これらの広告への接触者・非接触者を対象としたブランドリフト調査によって効果を測定します。

サーチリフト

ディスプレイ広告や動画広告は、ラストクリックコンバージョンのみで評価すると費用対効果が見られないケースがあります。しかし、そこで得られた認知がサービス名のキーワードが自然検索として現れることがあり、このように認知したブランドが検索行為につながることを「サーチリフト」といいます。ディスプレイ広告や動画広告配信後にどのくらい検索数が上昇したかは、サーチリフト測定によって効果検証します。

ソーシャルメディアも含めたさまざまな広告活動は、ブランドリフトやサーチリフトに大きく寄与することになるため、定期的なブランド効果測定を行うことが重要です。

6-2 広告におけるエンゲージメントと間接効果

エンゲージメントの観点では、広告に直接的な行動や認知だけを求めることは好ましくありません。ウェブ広告でエンゲージメントを高めるためには、エンゲージメントを意識したコンテンツ作りとインプレッション方法、ユーザーに対してどの広告が何回表示されて、コンバージョンになったのかという間接効果も重要です。

6-2-1. コンテンツの重要性と広告活用

これまでは、コンテンツといえば、自社メディアでのSEOの延長線上で作成されるのが主流でした。しかし最近では、顧客は企業の一方的なキャンペーンや売り込みを嫌い、そのネガティブな反応がソーシャルメディアなどで拡散されることが多く見られます。そのため広告においても、顧客が必要とするコンテンツを作り、自社メディアに誘導し、共感を得られる仕組みづくりが重要です

ネイティブ広告(ネイティブアド)

ネイティブ広告は、メディアサイトの記事中や前後に表示されるコンテンツタイプの広告です。ディスプレイ広告と比べてメディアサイト内で一体化されたコンテンツとして認識されるために視認性が高く、また、顧客の関心を惹くことでクリック率が高くなる傾向があります。

この場合、広告としてのビジュアルを重視するよりも、コンテンツそのものが顧客が興味を惹くものであることのほうが重要です。その上で、コンテンツをさらに魅力的に訴求する広告タイトルと説明文、画像といったクリエイティブの改善が必要です。

デジタルPR活動

PRとはPublic Relations(パブリック・リレーションズ)の略で、商品やサービスを取り巻くあらゆる団体や個人との関係性を、よりよい方向に構築するための広報活動のことです。

以前はマスメディアや記者に向けた情報配信や関係構築が基本でしたが、ソーシャルメディアの普及によりインターネット上で顧客と直接コミュニケーションを行う「デジタルPR」へと移行が進んでいます。

顧客の共感を得るには、顧客の視点で伝えたいことを、体験談やエピソードなどによって「物語」として紹介するストーリーテリングが必要です <https://en.wikipedia.org/wiki/Storytelling>。活動の評価において従来の指標として用いられていたのは、どの媒体に掲載されたかを示す広告換算額でしたが、デジタルPRではソーシャルメディアにおけるエンゲージメント指標やコンテンツの閲覧数なども加わります。さらに、より多くの顧客にリーチするかだけではなく、そこからエンゲージメントが生まれるコンテンツづくりに注力する必要があります。

マイクロコンバージョンによる顧客情報の獲得

「マイクロコンバージョン」とは、サイト上での購入や問い合わせなどの直接的な成果よりも、その手前に顧客情報を獲得できるメルマガ登録などの成果ポイントのことを指します。

コンバージョンを目的とした広告で、顧客との関係性を築くことは容易ではありません。また、せっかく広告をクリックしてもコンバージョンに至らなければ顧客情報を取得できません。

これに対し、顧客が必要としている情報を記事コンテンツやダウンロードコンテンツの形で提供し、ネイティブ広告なども活用しながらリーチを広げることは、見込み顧客の獲得効率を高めます。そこで、マイクロコンバージョンを目指すこともウェブ広告の目的の一つとなってきているわけです。

6-2-2. インフルエンサーマーケティング

インフルエンサーとは、多くの人々の購買や行動に影響を与える個人です。有名人や政治家などもインフルエンサーになりますが、アルファブロガーと呼ばれる著名なブログ運営者やユーチューバー(YouTuber)やインスタグラマー(Instagrammer)など、ソーシャルメディア上で多くのファンを抱える人も含まれます。インフルエンサーはファン数で分類されることもあり、著名人(Celebrity)は100万人以上のファンを抱えている人を、マイクロインフルエンサーは10万人以下のファン数を持つ人を指すこともあります(メディアによって定義が異なります) 。

企業広告を嫌う顧客に対し、インフルエンサーを活用して顧客に好意的な印象を持ってもらうインフルエンサーマーケティングが、効果的な手法として注目を集めています

欧米での調査 <https://www.emarketer.com/content/is-influencer-marketing-everything-it-can-be>によると、62%のマーケターは2018年にインフルエンサーマーケティングの予算を増やしており、61%のインフルエンサーは2018年にスポンサーを増やしています。

インフルエンサーマーケティングの実行

インフルエンサーマーケティングの実行の仕方を説明します。

1. インフルエンサーに伝わる商品・サービス・キャンペーンを作る

ここではインフルエンサー自身がその商品やサービスを魅力的に伝えられることが重要です。インフルエンサーが興味を持てないことやそのファンや影響力を持つ分野で関心を持たせることが難しいキャンペーンを依頼しても、十分な効果を得られないばかりか、協力を断られるケースもあります。また、依頼ができたとしても依頼した側が期待しているような投稿内容を書いてくれない可能性もあります。次のことを意識して企画をしてください。

  • 従来にはない利便性やデザイン
  • 顧客の期待を超えた、意外なサービスキャンペーン
  • インフルエンサーが人に伝えたくなる魅力的なキャンペーン
2. 適切なインフルエンサーを選定する

インフルエンサーマーケティングは、狙ったターゲットに対して影響力が強い人に、商品やキャンペーンのの発信を依頼することになります。最近では多数のインフルエンサーを持つエージェントやPR・キャスティング会社に依頼して選定してもらうこともあります。ここでは、顧客となる人の分野に対して、適切なインフルエンサーに作成や投稿を依頼をすることが最も重要です。そのためには、大きな影響力を持つ著名人への依頼も効果がありますが、よりターゲットに近く、使用イメージを想起しやすいマイクロインフルエンサーに依頼することも検討する必要があります。

3. インフルエンサーに商品やサービスを利用してもらう

商品やサービスをインフルエンサーに届けて、活用してもらいます。このときに重要なのはインフルエンサーに「発信頻度や内容を指定しない」ことです。インフルエンサーにとっては、そのファンとのエンゲージメントが最も大事です。そのため、インフルエンサーのブランディングやスタンスに合わせて商品やサービスを取り上げないと、当人のブランド価値を損ねる可能性があります。発信方法や頻度、内容についてはできるだけ意見しないでください。1.や2.が十分成功していれば、発信内容はプラスに働くはずです。

インフルエンサーマーケティングの注意点

インフルエンサーを活用したマーケティングについての法整備はまだ進んでいませんが、基本的にネイティブアドのガイドライン <https://www.jiaa.org/wp-content/uploads/2019/11/JIAA_nativead_rule.pdf>を参考にして、次のようなことに気を付けていきましょう。

広告であることと広告主を明示する

投稿をするときに「広告であること」と「依頼した広告主」を明示します。「ステルスマーケティング(ステマ)」では、あたかも自分の体験談のように商品の宣伝をし、消費者の信頼を損ねたり、法的な問題が起きるケースがありました。

具体的には、ハッシュタグで「#PR」などと書いて、広告であることが顧客にわかるように明記するなどの方法があります。

広告主が内容を要求せず、インフルエンサー本人の経験について紹介する

インフルエンサーに対して商品特徴などの紹介はしてもかまいませんが、発信内容を指定しないほうがいいです。インフルエンサー自身が考える記事や内容が発信されることが価値がある上に安全です。また原則として、インフルエンサーが実際に使ったり試したりした体験や印象についての紹介をしてもらってください。インフルエンサーが自分で試せるようにした上で、その体験に基づいた発信を依頼することが必要なのです。

6-2-3. 広告の間接効果の種類

広告を見たタイミングで、クリックをしたり、コンバージョンした効果を「直接効果」と呼ぶのに対して、広告を見たタイミングでは効果はなかったものの、その後に別なタイミングで効果が発生した事を「間接効果」と呼びます。間接効果の高い広告やチャネルを価値がないものとして判断すると、直接効果によるコンバージョン数も減ってしまうこともあります。広告の効果を解析するときには、直接効果と合わせて、間接効果を解析することで、正しい費用対効果の判断ができます。

ビュースルーコンバージョン

「広告を見た(インプレッション)」ごとのコンバージョンした件数です。

図:ビュースルーコンバージョン

図:ビュースルーコンバージョン

広告をクリックしなかったとしても、広告を見たことで、後日、広告以外の経路からサイトに訪問し、コンバージョンすることもあります。そのような間接効果を「ビュースルーコンバージョン」と呼びます。「ポストインプレッション」「ビュースルーレート(VTR:View Through Rate)」とも呼びます。

直接的なコンバージョンだけを見ると効果がないように見えてしまいがちですが、最初にその広告を見たことで、その後、顧客が検索をして訪問するといった行動を起こすこともあります。特にバナー広告のようなビジュアル訴求型の広告では、ビュースルーコンバージョンが起こりやすい傾向があります。Google広告やFacebook広告では、ビュースルーコンバージョンが測定できます。Facebook広告のコンバージョンはビュースルーコンバージョンとクリックコンバージョンをあわせてコンバージョンとしているため分けて評価したいときは表示を変更する必要があります。

アシストコンバージョン

広告をクリックしてサイトに訪問し、コンバージョンせずに離脱したのち、別の流入から訪問し、コンバージョンした際に、前の広告の貢献度を評価した指標です。

図:アシストコンバージョン

図:アシストコンバージョン

アシストコンバージョンは、Googleアナリティクスでチャネルごとのアシストコンバージョンのレポートがあります。

「アシストコンバージョンのレポート」の場所

コンバージョン」→「マルチチャンネル」→「アシストコンバージョン」で確認できる

再来訪率

再来訪率とは、全訪問者のうちのリピーターの割合です。

初回来訪からコンバージョンするまでの来訪回数が複数または長期にわたる場合においては、アシストコンバージョンと併せて「再来訪率」を計測することで、その媒体評価ができます。

6-2-4. アトリビューション分析

コンバージョンが発生した際、そのコンバージョンの発生に貢献した広告や媒体は何かを分析することを「アトリビューション分析」といいます。アトリビューションは、日本語で「特定や帰属」と訳されます。

アトリビューションによる間接効果測定の例として「バナー広告」「メルマガ」「リスティング広告」の3つの広告を経由して最終的にコンバージョンに至った場合を説明します。

ラストクリックコンバージョン(直接効果)

コンバージョンに至る直前にクリックされた広告を評価する方法です。

図:アトリビューションの例(1)

図:アトリビューションの例(1)

アトリビューションによる評価(間接効果)

コンバージョンに至る直前にクリックされた広告だけではなく、それ以前にクリックされた広告も含めて評価する方法です。

図:アトリビューションの例(2)

図:アトリビューションの例(2)

次に[図:Googleアナリティクスのアトリビューション分析]に示すのは、Googleアナリティクスのアトリビューション分析の画面です。チャネルごとにアトリビューション(貢献度)を確認できます。

図:Googleアナリティクスのアトリビューション分析

図:Googleアナリティクスのアトリビューション分析

左から次の重み付けで、3つのモデルで比較しています。

  • ラストクリック(終点)コンバージョンの直前に訪問したチャネル
  • リニア(線形):初回から均等にチャネルごとに重み付けした場合
  • ファーストクリック(起点)コンバージョンの最初に訪問したチャネル

この結果を見ると、ラストクリックのチャネルとして、オーガニックサーチは貢献度が低いものの、リニアやファーストクリックでは貢献度が高いことがわかります。

ウェブ解析を行うと、直接的なコンバージョンへの貢献のみを評価しがちで、費用対効果のみを考えて無駄なコストに見える施策を中止してしまうことがあります。間接的な効果も考慮し、新規顧客や見込み客を獲得しているチャネルや施策も大事にしていくことが、長期的な成果につながります

6-2-5. 企業データを活用した広告手法

広告を有効活用するには、ウェブサイトやユーザー情報などのデータをもとにした広告手法もあります。また、アフィリエイト広告では、アフィリエイターとの良好化な関係構築がかかせません。これらの広告の成果を高めるために必要な視点、手法、指標を紹介します。

クライアントが持つアセットに応じて、「ウェブサイトコンテンツの活用」「商品データの活用」「ユーザーデータの活用」があります。

ウェブサイトのコンテンツを活用する

ウェブサイトのページの内容(コンテンツ)をもとに自動的に広告を出稿する方法です。

この代表的な例が、Google広告の「DSA(Dynamic Search Ads)」です。動的検索広告とも呼ばれます。通常、検索連動型広告ではキーワードを設定して広告出稿を行いますが、DSAではウェブサイトのコンテンツに基づいて、広告の表示対象となる検索キーワードが自動設定されます。広告も自動生成される仕組みになり、検索キーワードと関連性が高いページがリンク先に指定され、広告タイトルも自動生成されます(説明文は手動設定)。リンク先の対象ページはすべてのウェブページを対象にすることもできますし、特定のページのみを対象にすることも可能です。メリットとしては、手動で追加したキーワードでは網羅しきれなかった検索クエリに対しても広告を表示することで、トラフィック、売上増加が期待できます。また、2018年5月よりYahoo!プロモーション広告のスポンサードサーチでも動的検索広告がローンチされました。

通常の広告は配信するキーワードを設定しますが、DSAでは配信するURLやコンテンツを指定するなど、多様な配信方法があります。

商品データを活用する

データフィード広告は広告に使用する商品データを媒体のフォーマットに合わせて変換して、広告配信する仕組みです。商品データなどをアップロードして広告をデータから生成、表示します。

ショッピング広告

商品データベースをアップロードすることで検索結果に商品の写真や名前、価格、店名などを表示する広告です。商品情報と関連性の高い検索をしたユーザーに広告が表示されます。イーコマースサイトではぜひ実施しておきたい広告です。

動的リマーケティング

データフィードとユーザーリスト(後述)両方を活用したディスプレイ広告です。ユーザーが過去にサイトで閲覧した商品やサービスを含む広告を表示することが可能です。商品レコメンデーションエンジンが、フィードのデータを使用して、人気の高い商品や過去にユーザーが閲覧した商品に基づき広告ごとの最適な商品の組み合わせを決定します。ユーザーごとにカスタマイズされたメッセージを伝えることができるので、見込み客の再訪促進、販売拡大につなげることができます。広告は商品やサービスのフィードを動的に使用して広告のサイズを自動的に調整し、広告枠全体を効率よく活用します。

ユーザーデータを活用する

ユーザーデータを広告のターゲットリストとして活用する方法です。リターゲティングもその一種で、一度訪問したユーザーに再訪問を促すこともできますし、より高度なリターゲティング(特定のページ訪問者に特定の広告を配信する)なども可能です。

カスタマーマッチ

Google広告のターゲティング手法の1つです。顧客データ(メールアドレス)をアップロードして、広告のターゲットに活用する手法です。配信先は、Google検索、Googleショッピング、YouTube、Gmailです。ディスプレイネットワークのサードパーティーのサイトには配信できません。

類似ユーザー

ディスプレイ広告、ソーシャルメディア広告などで主に活用されるターゲティング方法です。配信するには、既存のユーザーリストから生成される類似ユーザーリストを設定します。類似ユーザーリストは、既存のユーザーリストと近しい特性があるユーザーが対象です。そのため、既存の顧客と類似した新規顧客を開拓することが期待できます。

6-3 ソーシャルメディアにおけるエンゲージメント

ソーシャルメディアは、基本的に顧客が個人的な交流のために利用する場です。商品認知と販売促進を意図したプロモーションを行う際は、ソーシャルメディアの特性を充分に理解して、ユーザーとどのように接すればよいのかを理解して進めることが重要です

2020年7月地球上でソーシャルメディアを利用する人口は過半数を超えました。それだけ人々にとって欠かせないメディアになっています。

<https://wearesocial.com/blog/2020/07/more-than-half-of-the-people-on-earth-now-use-social-media>

6-3-1. ビジネスにおけるソーシャルメディアの利用方法

主要なソーシャルメディアのいくつかにはビジネスアカウントがあり、ビジネスでの活用ができるようになっています。ウェブサイトを作るよりもコストがかからず運用が容易であるため、小規模店舗ではソーシャルメディアをウェブサイトや、サイト内のオウンドメディアのように活用するケースも増えています。

このとき、ソーシャルメディアを交流を目的としている顧客にとって、過度な広告やマーケティングが自分のタイムラインにあると不快に感じ、むしろ悪い印象を与え逆効果になってしまうこともあります。ときには、ソーシャルメディアの投稿に対して不快に思った顧客の批判的な発言が広がり、炎上を招くことさえあります。企業としては、一方的な広告ではなく、基本的には顧客が望む交流を促進することを前提にマーケティングを行う必要があります。

このような性質から、ソーシャルメディアのオーガニック運用でコンバージョンに直結させることは比較的難しく、間接的な効果を考えることが適切です。

しかし、ソーシャルメディアを活用したマーケティングは、今や企業にとって取り組むべき手法であることは間違いありません。それは、企業にとって、ソーシャルメディアは顧客と最も近い接点とコミュニティを作ることが可能な場であるからです。単に公式見解を発信するような一方的なアカウントとするのではなく、顧客の生の声を聞き、コミュニケーションを行い、より身近な課題を引き出し事業の成果につなげていきます。

したがって、企業のソーシャルメディアのアカウントは、代理店などに運用を任せるだけではなく、顧客と直接の接点を持ち、事業をよく知る自社内での運用が理想的です

ソーシャルメディアのタイプと業務機能への適用

ソーシャルメディアは、交流する相手と情報によって、4つのタイプに分けられます。

  • ソーシャルグラフ:友人とのつながりを楽しむために使われるメディア
  • インタレストグラフ:同じ趣味志向のつながりを楽しむためのメディア
  • フロー型:タイムライン上で流れるようなリアルタイム性に価値のあるメディア
  • ストック型:過去の情報を蓄積し、いつでも閲覧できることに価値があるメディア

Twitterはインタレストグラフのフロー型、YouTubeはインタレストグラフのストック型、Instagramはソーシャルグラフとインタレストグラフの両方の側面を持つフロー型、FacebookやLINEはソーシャルグラフのストック型とフロー型の両方の側面を持つソーシャルメディアといえます。

図:主なソーシャルメディアのタイプ

図:主なソーシャルメディアのタイプ

企業が従来のさまざまな業務をソーシャルメディアに適用する際、どのようなことに活用できるかを理解した上で、これらのタイプ別に向き不向きを考慮し、運用していきます。

ソーシャルメディアの活用と業務機能

ソーシャルメディアの活用と業務機能を説明します。

表:ソーシャルメディアの活用戦略と業務機能

ソーシャルメディアの
活用戦略

業務機能

傾聴(耳を傾ける)

リサーチ

会話(話をする)

マーケティング

活性化(活気づける)

セールス

支援(支援する)

サポート

統合(統合する)

商品開発などのビジネスプロセスへの参加

傾聴

ソーシャルメディア上での顧客の投稿やハッシュタグを検索することで、商品やサービス、業界に対する印象や課題を確認できます。例えば、TwitterやInstagramのストーリーでは、「投票機能」などを活用して、顧客にアンケートを実施できます。

会話

ソーシャルメディア上で新商品の告知やキャンペーンの案内することもできます。Facebookページでクーポンや割引チケットを送ったり、登録フォームを作ってメールニュースやイベントを作成したセミナーの受付を行ったりといったことが可能です。

活性化

CTAボタンを設置することで、ウェブサイトに誘導したり、店舗の予約を行ったりできます。また、Instagramでは商品の販売を行えます。ソーシャルメディアで告知をした上で、簡単なランディングページやフリマアプリで販売することや、メディア上は各種サイトにリンクして予約を受け付けることも可能です。最近ではメディアそのもので決済まで完了することもできるようになっています。

支援

顧客の問い合わせをページやメッセージで受け付けて回答できます。いくつかの企業ではハッシュタグでツイートするとサポートにつながる仕組みを持っています。また、傾聴と組み合わせてニーズのある顧客に対してサポートができます。これを「アクティブサポート」と呼びます。例えば、商品を探している顧客にアクティブサポートで探している商品を案内するケースもあります。

統合

商品企画や新たな商品ニーズを知るために、参加している顧客にヒアリングをしたり、新たな商品企画や活用方法をシェアする機会を提供できたりします。例えば、日本コカ・コーラでは、いろいろなドリンクを組み合わせた新しいテイストを顧客が開発したり、シェアできたりする環境を提供しています。

6-3-2. ソーシャルメディアでの情報発信

ソーシャルメディアマーケティングは、トリプルメディア戦略に基づいて、発信方法が変わります。

オウンドメディアとしてのソーシャルメディアの発信方法

自前でソーシャルメディアのアカウントを取得し運用します。各ソーシャルメディアのアカウントの取得方法は、それぞれの項目を参考にしてください。

Facebook

Facebookページというブランド用または、ビジネス用アカウントを取得します。専用ページ <https://www.facebook.com/pages/creation/>から、ガイダンスに従って進めれば取得できます。Facebookの利用目的やアカウントのタイトルを求められるので、事前に決めておきましょう。なお、取得にあたり、事前に管理者の個人アカウントの取得が必要です。

なお、Facebookでの企業利用では「ビジネスマネージャー」の使用を推奨します。

Twitter

Twitterのアカウントは個人、組織などで取得の方法が変わるということはありません。取得はガイダンスに従えば問題なく完了できますが、詳細な方法は専用ページ <https://help.twitter.com/ja/create-twitter-account>からも参照可能です。

Instagram

Twitterと同様で、個人、組織などで取得の方法が変わるということはありません。取得方法はスマートフォンの公式アプリから行うことが一般的ですが、パソコンのウェブブラウザから行う場合は、Instagramのログイン情報が保存されていないウェブブラウザが必要です。ガイダンスに従えばアカウントは問題なく取得できます。

ただし、ビジネスで十分に活用する場合は、一度アカウントを取得したあと、プロアカウントという設定に切り替える必要があります。プロアカウントに設定すれば、店舗への道順やお問い合わせ先を表示することができるほか、Instagramインサイトという機能で、リーチ数(接触したユニーク顧客数)、インプレッション数(露出回数)のほか、シェア数(投稿がDMでシェアされた回数)、保存数(顧客によって投稿が保存された回数)などの詳細な情報が確認できるようになります。設定方法は専用ページ <https://help.instagram.com/502981923235522>を参照してください。

LINE

LINE公式アカウントという個人または法人用ブランド用アカウントを取得します。専用ページ <https://www.linebiz.com/jp/entry/>から、ガイダンスに従って進めれば取得できます。承認済アカウントと非承認アカウントというアカウント種別があり、承認済アカウントはLINEからの審査などが発生します。

その他のソーシャルメディア

LinkedInなどは、Facebookと同じで個人アカウントを取得してから、ビジネスアカウントを取得するタイプのものと、TikTokなどのように個人アカウントとビジネスアカウントを同じように取得するものがあります。それぞれ、事前に公式の情報を確認しましょう。

アーンドメディアとしてのソーシャルメディアの発信方法

第三者に発信してもらうことになるので、何よりも話題性が必要になります。方法は1つではありませんが、ソーシャルメディアに関連する代表的なものを挙げておきましょう。

  • ソーシャルメディアで話題になるような商品・サービスを開発する
  • ソーシャルメディアで「映え」るパッケージ、フォトプロップス(写真用の小道具)、パフォーマンス(表現)を用意する
  • ソーシャルメディア上で、顧客にシェアされやすいウェブメディアの取材を受ける
  • ソーシャルメディアで投稿してもらうことで、値引きや商品をプレゼントする
  • バイラルコンテンツを作り、配信する
  • インフルエンサーに協力を仰ぐ

話題性の作り方は多種多様で網羅はできませんが、一般の人が他者に伝えたくなるような内容であることが大切です。真摯な商品へのこだわりや顧客サービスが、意図せずアーンドメディアの元ネタとして機能することも少なくありません。

また、各ソーシャルメディアの機能や仕様の更新は目まぐるしく変わります。また、使用する条件(ビジネス単位でアカウントを作る場合と個人でアカウントを作る場合、広告代理店を使う場合など)によっても適切な使用方法が変わることがあります。その都度、最新情報を確認しながら使用してください。

6-3-3. ソーシャルメディアに関する指標

ソーシャルメディアの解析とオウンドメディアの解析で最も異なる点は、コンテンツと数字の主従関係です。解析において、数字はコンテンツよりも重要です。よい指標のコンテンツは、実際の内容は別として成果に貢献しています。したがって、効果がなくなるまで強化することが成果につながります。

しかし、ソーシャルメディアでの解析では、コンテンツは数字よりも重要です。あるコンテンツの解析結果が優れていても、それはそのコンテンツの結果を示すだけであり、同じことを繰り返せばよいという単純な結論になりません。このコンテンツの反応がよかった理由や顧客インサイトを踏まえ、常に新しい情報を提示して飽きさせないことが大事な場合もあります。ソーシャルメディアでは、全体の文脈と顧客の意図を理解するための一助として解析を行ってください

ソーシャルメディアの解析には定量的な解析と定性的な解析があります。

表:ソーシャルメディアの解析

指標

分析方法例

定量分析

リファラー(詳細情報なし)

メディア判断レベル、セグメント把握に利用する

リファラー(詳細情報あり)

ソーシャルメディア解析ツールを活用し、発信ごとの反応を詳細に把握する

いいね!数、RT数、フォロワー数、プログ口コミ数、自社サイトPV数(比較値として)など

リスト化に利用する。SNS内アンケートで属性把握も可能。イベント前・実施中・イベント後での比較から波及効果を推測する

定性分析

活性状態

コンセプト設計が重要。モデレートすることで生の声を収集する

定量分析

「いいね!」の数や「リツイート(RT)」数、会員数、購読者数、フォロワーの数など、数値を記録して効果を計ることが可能です。これらの指標は、企業の公式アカウントでは第三者も容易に測定でき、競合と比較するためのツールもあります。

一方で、ソーシャルメディアの管理画面にあるアナリティクス機能を使うと、自社のアカウントのインプレッション数などの管理者にしかわからない情報を見ることもできます。

定性分析

定性分析では、数値として表せない質的なデータを分析します。コメントの内容を分析することによって、その記事や発言に対する反応の質を確認できます。定量的な測定結果でシェアやコメントが増えたとしても、必ずしも求めていた反応が得られているとは限りません。場合によっては、まったく逆のネガティブな反応を示している場合もあります。これらは数値として測定できませんが、各発言に対してどのような反応だったかを知ることは、顧客の関心を高めるために欠かせません。

ソーシャルメディア解析ツールによっては、各顧客の発言を、テキストマイニング技術などにより分析し、内容から自動的にポジティブ・ネガティブを判断してくれるものもあります。

エンゲージメント率

エンゲージメント率は、ファン数やリーチ数インプレッション数などに対するアクション数の割合です。各ソーシャルメディアごとにエンゲージメント率の算出方法が異なります。またメディア側が顧客行動に基づいてエンゲージメント率の定義の見直しを測り、算出方法が変更する場合もありますので、注意してください。

Facebookエンゲージメント率
投稿へのアクション(いいね!+コメント+シェア+クリック)
÷投稿時時点のリーチ数
Twitterエンゲージメント率
ツイートへのアクション(いいね!+シェア+リツイート+返信+クリック+フォロー)
÷ツイートのインプレッション合計数
Instagramエンゲージメント率
Instagramインサイトのインタラクション数(いいね!コメント、投稿保存)
÷リーチ数インプレッション数またはフォロワー数

なお、Instagramについては公式の計算式はありません。分母を定義するのは独自で決めることになります。その際にフォロワー数、インプレッション数リーチ数の3種類を用いるのが一般的です。一度分母の定義を決めたらそれを継続して使ってください。

LINEのタイムラインのエンゲージメント率
投稿へのアクション(いいね!+コメント+共有)
÷投稿時時点の友達数

ソーシャルメディアでは、エンゲージメントとエンゲージメント率が重要といわれています。なぜなら、エンゲージメント率リーチにも大きく影響する場合があるからです。

検索エンジンでは、検索結果のクリック数やウェブサイトでの行動は、検索順位やリーチに影響しないといわれています。顧客がウェブサイトでたくさんページを見ていたり、検索結果をたくさんクリックしたりしても、単純に順位が上がるということはありません。

しかし、ソーシャルメディアでは、たくさんクリックされたり、いいね!を押されたりすることで露出頻度が変わる仕組みのメディアもあります。また、エンゲージメント率はその投稿が顧客にとって関心度の高いコンテンツであったかどうかを判断する指標となるため、データを解析するようにしましょう。

ソーシャルメディアの解析例

ソーシャルメディアはメディアごとに指標の定義も違います。メディアごとの指標の定義と、それに伴う影響を把握しておく必要があります。

Facebookページを例にして説明しましょう。エンゲージメント率の高いエントリー(投稿、記事)は、リーチ数も高まる傾向にあります。しかし、リーチ数エンゲージメント率などを比較すると気付くことがあります。毎週投稿を行っているFacebookページについて、Facebookインサイトを見て次のような状況だったとします。

「ウェブ解析士協会の紹介」は、リーチ数は高いのですが、エンゲージメント率、投稿クリック数も低くなっています。この記事は、ソーシャルメディアで認知度の高い誰かがシェアをしたなどの理由で投稿自体は見られているものの、内容がユーザーにマッチしていないためにエンゲージメント率も低く、紹介したコンテンツに対しても関心が薄いために投稿クリック数も低くなっていると考えられます。まずは投稿内容を見直す必要があるでしょう。

「新しい講座紹介」は、リーチ数エンゲージメント率も低いものの、投稿クリック数は高くなっています。投稿されたコンテンツ内容や画像が効果的に顧客をウェブサイトに誘導していると推測できます。コンテンツはよいので、リーチ数エンゲージメント率が伸びる投稿をすると効果的でしょう。

「ウェブ解析用語の説明」は、リーチエンゲージメント率も高くてよいのですが、投稿クリック数は伸びていません。ファンとの関係性を構築する目的であれば問題はありませんが、サイトに誘導することが重要ならば、リンクを目立たせるなどの施策が必要でしょう。

エンゲージメント率クリック数を上げるための方法の1つとして、OGP対策があります。Facebookなどソーシャルメディアでウェブサイトを紹介するときに、そのページの情報を正しく伝えるためのHTMLの表記方法を「OGP(Open Graph Protocol)」といい、この設定を変えると効果的な画像やタイトルをソーシャルメディアで表示することが容易になります。

このように、リーチ数エンゲージメント率や投稿クリック数の関係や投稿時間帯の反応から投稿の露出を促進し、さらにコンテンツの内容をそのメディアや対象ユーザーの視点でみなし、エンゲージメントが高まる投稿ができるような工夫をしてください

表:Facebookページウェブ解析士協会の投稿別データの例

投稿

リーチ数

エンゲージメント率

投稿クリック数

ウェブ解析士協会の紹介

100,000

5%

10

新しい講座紹介

2,000

5%

50

ウェブ解析用語の説明

100,000

15%

10

6-3-4. 中国でのソーシャルメディアの重要性

ソーシャルメディアの普及に伴い、企業とユーザーの距離が近づきました。そしてソーシャルメディアを活かすプロモーションは広義のオウンドメディアとして、オウンドメディアの一部になってきました。

特に中国ではソーシャルメディア活用に特化しているオウンドメディアは基本的な考え方だと言っても過言ではありません。

ご存じのように、近年注目されているのはWeibo、WeChat、TikTokの3つです。この3つは多くユーザーに利用されており、それぞれのソーシャルメディア種類の中に代表的な存在です。

ある銀行のプロモーションの例

2017年11月2日、トマト卵炒めのレシピに関する動画広告が公開されました。公開されてからすぐ話題になり、Weibo、WeChatでの「トマト卵炒め」に関する話題検索は大幅に増えました。1日だけでWeChat上「トマト卵炒め」に関する微信指数(WeChatで話題になった数)が300万近くに上りました。

動画の内容は、海外に留学している息子が友達を家に招いてトマト卵炒めを作ろうとするのですが、トマト卵炒めの作り方が分からなくて、チャットで母国にいる両親に聞きました。そして両親が実際にトマト卵炒めを調理してから、作り方の動画を息子に送りました。これはある銀行の留学生向きクレジットカードの広告だと、動画の最後にわかるようになっています。

この動画広告はこのプロモーションの広告主である銀行のWeiboの公式アカウントで公開されて、「両親の子供への愛情」に感動したユーザーの間ですぐに話題になりました。そしてWeiboだけではなく、WeChatなど他のソーシャルメディアに拡散され、大きな注目を浴びました。新商品・新サービスの認知施策として成功したといえるでしょう。

注目を集めることが目的なら今回のプロモーションは成功でしたが、動画内容に、「トマト卵炒めレシピならネットで調べれば普通に出てくるのに、なんで親に動画をとらせるような手間をかけさせるの」という批判の声も出てきました。

他方、もう一つ残念な結果もありました。本来であれば、新しいクレジットカードを紹介する目的のはずでしたが、公開された翌日にこの銀行名やクレジットカードに関する微信指数は合計100万弱でした。「トマト卵炒め」の約3分の1で、大きな差が出ました。

大きな要因の1つは動画の内容はクレジットカードと関連性が低いことです。クレジットカードの宣伝より、「トマト卵炒め」のほうはユーザーが深い印象を残ってしまいました。ソーシャルメディアを活用した話題性のあるプロモーションでしたが、プロモーションの目的には合わないコンテンツ内容でした。

中国ではソーシャルメディア活用が必要

広義のオウンドメディアは自社サイト、ブログ、ソーシャルメディアの公式アカウントなど、自社が保有する、情報発信できるメディアです。

近年中国において、TikTokをはじめさまざまなソーシャルメディアが新規に立ち上がりました。生活のスピードが加速した今、これらのソーシャルメディアを使って、通勤や行列などの断片的な時間を楽しめるようになりました。特に若者に人気です。

このようなトレンドに、1つのユーザーへのアプローチ手段や情報発信手段として、企業だけではなく、テレビ局、ECサイト、雑誌などさまざまな業界がソーシャルメディアの公式アカウントを持ち始めました。中国情報系英字新聞China DailyもTikTokの公式アカウントを持ち、常に最新ニュースを発信しています。

このように、中国での自社コンテンツの提供はソーシャルメディア活用に特化している傾向があります。中国へビジネス展開すると考えている企業やメディアは、狭義のオウンドメディアや自分のウェブサイトでの情報発信ではなく、ソーシャルメディアを活かす情報発信が大事となってきます。WeiboとWeChatの活用を意識している企業・メディアは多いですが、それだけではなく、目下流行っている新しいソーシャルメディア、あるいはターゲットユーザーがよく利用するソーシャルメディアも意識して情報発信し、プロモーションを行うほうが効果的です。

ただし、前述した事例のような失敗をしないように、提供する商品・サービスとの関連性が高いコンテンツで、ターゲットユーザーに発信することを忘れないでください。

そして、微信指数など、解析の際に利用するソーシャルメディアの独自の指標を積極的に取り込みましょう。

ソーシャルメディアを使えば「友達」のような親しい距離間でユーザーにマーケティングすることができます。そこからロイヤリティの高いターゲットユーザーを自社のウェブサイトへ誘導できます。イーコマースサイトの場合、購買率が上がるでしょう。BtoBビジネスの場合、問い合わせが増えるでしょう。

中国へビジネスを展開する際、ソーシャルメディアを活用する広義のオウンドメディアの運営をぜひチャレンジしてください。

6-4 オーガニックサーチにおけるエンゲージメント

オーガニックサーチとエンゲージメントの関係についても見ていきましょう。

6-4-1. キーワード分析の考え方

キーワード分析の考え方を整理しておきましょう。前提として、サイトにはさまざまなクエリで来訪がありますが、そのすべてを一律に対策すべきではないということです。なぜなら、検索者がキーワードに込めた意図(インテント)はそれぞれに異なるため、同じ検索流入であっても、コンバージョンへの結び付きやすさはクエリごとに変わるからです。

例えば、最終成果を「購入・問い合わせ」に設定したとして、その成果に関係しないクエリに対して施策を講じたところで、トラフィックは増えてもコンバージョンにはつながりません。一方、間接的にコンバージョンに寄与するクエリについて、直接コンバージョンにつながっていないからといって、施策を放棄してしまうことも適切ではありません。ただし、現在は、キーワードごとのコンバージョンを明確に取得する手段はないので、該当のクエリが主にランディングしているページでのコンバージョン獲得状況から推測することになります。

自然検索では、初めてサービスを利用する顧客の認知から行動(購入や問い合わせ)に至る検索インテントの推移は、顧客の検索行動に関わるコンテキストのフレームに則ると、[図:キーワード分析の考え方]の概念図のようになります。一般的に、新規顧客が認知から購入まで1回の検索で完了することは稀で、複数回の下調べしたのちに行動に至るものと考えられます。コンバージョンに至らなくても、興味を深めるのに重要なクエリは分析する対象とすべきです。分析において重要なのは、成果を定義した上で、そのクエリが成果に対してどのような位置付けにあるかをグルーピングすることです。

図:キーワード分析の考え方

図:キーワード分析の考え方

6-4-2. クエリのグルーピング

クエリをグルーピングする際は、次のような分け方を念頭においてください。

ブランド/非ブランド

サイト名・サービス名を含むかどうかで分けます。ブランドの認知度が高い商品・サービスは、ブランドクエリが全体の8~9割を占めることもあります。一般に、ブランドクエリのほうが、非ブランドクエリよりもCVRが高くなります。

インフォメーショナル/トランザクショナル/ナビゲーショナル

Googleが提唱する「インフォメーショナル」「トランザクショナル」「ナビゲーショナル」という3つのクエリに分ける方法もよく挙げられます。クエリの分析は、Google Search Consoleを用います。具体的に、ウェブ解析士協会のウェブサイトに来訪しているクエリをもとに、例示してみましょう。

図:Google Search Consoleのデータ

図:Google Search Consoleのデータ
インフォメーショナル

情報収集のためのクエリ。「●●を知りたい」というインテント

例)「ウェブ解析」「上級ウェブ解析士 難易度」など

トランザクショナル

取引行動のためのクエリ。「●●したい」というインテント

例)「ウェブ解析士 問題」「ウェブ解析士 テキスト」など

ナビゲーショナル

案内型のクエリ。「●●へ行きたい」というインテント

例)「waca」「ウェブ解析士協会」など

実際には、1つのクエリが1つの属性のみを保有するわけではなく、属性が混在しています。例えば、「ウェブ解析士 テキスト」は「購入したい」というトランザクショナルのインテントと、「テキストについて知りたい」というインフォメーショナルのインテントが混ざっているという考え方になります。

この3つのグルーピングと一般的なコンバージョンまでの距離をまとめると、次の表のようになります。

表:コンバージョンまでの距離感

コンバージョンまでの距離

遠い

近い

インフォメーショナルクエリ

トランザクショナルクエリ

ナビゲーショナルクエリ

Know/Do/Buy/Go

Googleが提唱するもう1つの区分が、「Know」「Do」「Buy」「Go」クエリです。行動と購買が分かれたような形になり、より顧客の意図に沿った対策が必要となります。先ほどのウェブ解析士協会のウェブサイトでのクエリを見てみましょう。

Know

情報収集のためのクエリ。「●●を知りたい」というインテント

例)「ウェブ解析」「上級ウェブ解析士 難易度」など

Do

行動してみるときのクエリ。「●●をやってみたい」というインテント

例)「ウェブ解析士 問題」「ウェブ解析士 コツ」など

Buy

取引行動のためのクエリ。「●●を購入したい」というインテント

例)「ウェブ解析士 テキスト」「ウェブ解析士 問題集」など

Go

案内型のクエリ。「●●へ行きたい」というインテント

例)「waca」「ウェブ解析士協会」など

表:コンバージョンまでの距離感

コンバージョンまでの距離

遠い

近い

Knowクエリ

Doクエリ

Buyクエリ

Goクエリ

Googleでは、これらのクエリごとに、検索結果一覧の表示方法が異なります。例えば「Knowクエリ」の場合はその検索クエリを説明する一文が表示され、「Goクエリ」の場合は地図が表示されるといった具合です。フレーズごとにクエリの区分を確認しながらグルーピングを行い、それぞれのグループにあった対策を講じるようにしましょう。

6-4-3. グルーピングと分析の方法

クエリは、単ワード単位ではなくグルーピングして行います。また、クエリは、インテントごとに見るべきです。仮に、ブランドと非ブランドで分ける場合、「ブランド名完全一致」だけでは、入力間違いや実質的に同じことを示しているクエリの動きを逃すことになってしまい、正確な動きを捉えられません。

図:ウェブ解析士協会のサイトに流入しているクエリ

図:ウェブ解析士協会のサイトに流入しているクエリ

再びウェブ解析士サイトのクエリの抜粋ですが、「ウェブ解析士」と「web解析士」と「web解析し」は、ワードとして見れば異なりますが、インテントは同じと考えられます。これらを別々に追いかけることのないように、先に示したフレームなどをもとにクエリをインテント別に分類します。

Google Search Consoleで分類する

Google Search Consoleでは「検索パフォーマンス」から、クエリにフィルタをかけて「●●を含む/含まない」のようにグルーピングできます。次の2つの「解析」を含むクエリでフィルタした場合の前後のデータを示します。

図:フィルタを適用しない場合

図:フィルタを適用しない場合

図:「解析」を含むフィルタを適用した場合

図:「解析」を含むフィルタを適用した場合

[図:「解析」を含むフィルタを適用した場合]からは、次のようなことがわかります。

  • クリックの28%(2.51万/8.96万)は「解析」を含むクエリで獲得している
  • 平均CTRは「解析」を含むクエリだと、全体の9.2%から28%へと上昇する

また、全体では7月の後半に表示回数の増加が見られますが、「解析」を含む場合は増加していないため、この増加は別のクエリによるものといえます。

ただし、Google Search Console上では「~を含む」「~を含まない」「一致」しかフィルタできないため、先に挙げたような「ウェブ解析士」と「web解析し」をまとめることができません。必要に応じて、クエリをCSVでダウンロードし、正規表現などを活用してグループ化を行うとよいでしょう。

APIで取り込んでグルーピングする

Google Search Console上で表示されるクエリおよびページデータは1,000行という制限があり、ロングテールクエリなど、1つひとつのクリック数は少ないものの裾野の広いクエリはまとめづらいことになります。特に、非ブランドでトラフィックの多くを獲得するサイトでは、実情に近い分析ができなくなります。

そこで、Google Search Consoleで用意されているAPIを用いると、1,000行以上のデータ行を取得できるようになるため、Googleスプレッドシートと連携するなどしてグルーピングしてください。例えば、Google Chromeの機能拡張である「Search Analytics for Sheets」を使うと、Google Search Console上のデータを簡単にGoogleスプレッドシートに取り込めます。

6-4-4. エンゲージメントの分析と改善方法

エンゲージメントを高める段階では、コンバージョンを生まないインフォメーショナルクエリで来訪するケースが多いと考えられます。ここでは、インフォメーショナルクエリの中でも成果に近いものと遠いものを分けて、さらに細かくグループ分けすることが必要です。

既来訪のクエリ

再度、ウェブ解析士協会のウェブサイトのクエリを示します。いったん「ウェブ解析士」という資格の存在を認知して、さらに資格の内容を知ろうとするインテントのクエリとして「解析士」を含むクエリをグルーピングします。

図:「解析士」を含む検索結果

図:「解析士」を含む検索結果

インフォメーショナルの属性を強く持つクエリとして「難易度」「合格率」が挙げられます。これらのクエリに対して、表示回数が多く、伸びしろのあるクエリを中心に、次のような対策を検討します。

  • 表示順位が低ければSEOによって上位表示を確実にする
  • CTRが低ければタイトル・ディスクリプションの編集によって検索結果の充実を行う
  • 対応するページの分析によって滞在時間が少なければ、コンテンツを見直す

未来訪のクエリ

Google Search Consoleでのクエリのピックアップでは、すでに存在するコンテンツのクエリしか収集できません。そのため、キーワード抽出ツールなどで、関連したコンテンツがないためにGoogle Search Consoleには現れていないものの、実際には検索されているクエリを見つけて、対応するコンテンツを作ります。

また、エンゲージメントを高めるコンテンツはオウンドメディアに限らないこともあります。第三者が好意的に書いてくれたブログやソーシャルメディア上のよい言及も、サービスのエンゲージメント向上につながります。また、「○○+評判」などのクエリは、公平な情報を求めるインテントのため、オウンドメディアでのコンテンツにそぐわないクエリとなります。顧客のインテントに合わせてコンテンツを作り、改善を重ねることで、成果につながる来訪に結び付けてください。

6-5 モバイルアプリにおけるエンゲージメント

モバイルアプリにおいて、エンゲージメントは継続した利用を意味する重要な要素です。

6-5-1. アプリ内マーケティングの手法

これまでは、「アプリのマーケティング」という場合、広告やプロモーション施策のことを指すことが多く、アプリのインストール数やCPI(Cost Per Install)といった獲得に関するKPIの改善ばかりが注目されてきました。しかし、新規顧客を獲得しても、彼らがすぐにアプリを使わなくなってしまったらインストール数の促進にかけたコストは無駄になってしまいます。

このような流れを受け、近年ではアプリをインストールした顧客の起動率、利用頻度や継続率、アプリ内での課金などを高めて最終的に売上につなげる「アプリ内マーケティング」と呼ばれる手法にスポットライトが当たるようになりました。

アプリ内マーケティングには、大きく分けて「プッシュ通知」と「アプリ内メッセージ」の2つがあります。プッシュ通知は主に顧客のリテンション率改善に、アプリ内メッセージはコンバージョン率改善に有効です。

6-5-2. プッシュ通知

プッシュ通知はスマートフォンのロック画面に、クーポン配信や更新情報など任意のメッセージを掲載する機能です。配信には、ユーザーの許諾が必要です。

  • リモートプッシュ通知:インターネットに接続したユーザーにアプリ配信プラットフォーム経由で端末に通知します。
  • ローカルプッシュ通知:ユーザーの操作や位置情報にあわせて、あらかじめ定義されたルールで通知します。

プッシュ通知は、顧客のリテンションやエンゲージメントを高める施策として非常に有効です。プッシュ通知の効果を高める重要なポイントは、次に示す5つになります。

1. 許諾率を高める

顧客にプッシュ通知を許可してもらうために、OS標準のダイアログを出す前にカスタマイズしたダイアログなどを表示して、プッシュ通知を受け取るメリットを顧客に伝えます。

2. セグメント別に通知を送る

プッシュ通知は全顧客を対象に同じ内容を送るのではなく、ターゲットセグメントに合わせて別のものにすることで、開封率を高められます。配信対象を絞り込む際は、「性別」「年齢」「居住地」などの顧客デモグラフィックでセグメントする方法と、「1週間以上アプリを起動していない」「買い物かごに商品を残したままで決済していない」といった顧客のアクションごとにセグメントする方法がありますが、多くの場合、アクションベースで配信対象を絞りこむほうが開封率は高くなります。

例えば、フリマアプリで「カートに商品が残っています」といった内容のプッシュ通知をセグメント化した顧客に送付することで、プッシュ通知の開封率が上昇します。Repro*のプッシュ通知機能では、アナリティクス機能と連動して、機能と連動して、アクションに基づいてセグメントした顧客群に対してプッシュ通知を送ることが可能です。

3. 文言を最適化する

プッシュ通知の文言を最適化することによって顧客に興味を持たせ、開封率を高められます(出典:説得⼒のあるプッシュ通知の⽂⾔を書く4つのコツ <https://growthhackjournal.com/4-tips-on-writing-persuasive-push-notification-copy/>)。例えば、次の例ではプッシュ通知の文言に「20,000人のファン」という数字を含めることによって人気の試合であることを示し、顧客の興味を喚起しています。

4. 配信時間を最適化する

顧客が開封してくれそうなタイミングでプッシュ通知を送ることも重要です。顧客の行動パターンに合わせて配信することによって、プッシュ通知を見てもらえる可能性を高められます。

5. ディープリンクを設定する

プッシュ通知にディープリンクを設定することで、アプリのトップページを表示することなく、顧客に見せたいページに直接遷移させることが可能です。

プッシュ通知はアプリを起動していなくても顧客の端末に通知や音を鳴らすことができるの強い訴求力をもちますが、不要な通知と感じられると通知を拒否設定にされてしまうので、配信頻度や内容を効果測定しながら最適なバランスを探ることが重要です。

実践的な指標の活用

効果的なプッシュ通知を送れているかを確かめる上で、4つの重要な指標について説明します。

プッシュ通知の配信対象者数

プッシュ通知が届く顧客の数です。通常、プッシュ通知サービスの管理画面から確認できます。配信対象者数が減っていたら、プッシュ通知を高頻度で送り過ぎたり不適切なタイミングで送ったりしているために、顧客が不快に感じてアプリをアンインストールしている可能性があります。

プッシュ通知の許諾率

配信対象者数のうち、アプリからのプッシュ通知を受け取る設定にしている顧客の割合です。いくらプッシュ通知の内容や配信タイミングなどが最適化できていても、受け取っていない顧客が多くては意味がありません。許諾率を最適化することでプッシュ通知を受け取る顧客の割合を増やし、より多くの顧客にプッシュ通知によるマーケティング施策を行えます。iOSと比べて、Androidのプッシュ通知の許諾率が高くなる傾向になります。これは、iOSアプリは初回起動時にプッシュ通知の配信許可を顧客に確認する仕様になっているのに対し、Androidアプリでは顧客に許可を取る必要がなく、デフォルトでプッシュ通知を許諾している状態になっているからです。事実、iOSとAndroidの許諾率を比較しているKahunaのレポートでは、AndroidのほうがiOSよりも40%近く許諾率が高くなっています。

プッシュ通知の開封率

プッシュ通知の配信対象者数のうち、受け取った通知を開いてアプリを起動した顧客の割合です。プッシュ通知の開封率を見ることで、配信したプッシュ通知の内容(文言、画像)や配信タイミングが適切かどうかを把握できます。また、プッシュ通知を特定のセグメントに絞り込んで配信している場合、全顧客に対して配信した場合と比べて、顧客を絞り込んだ場合に効果があったのかを確認できます。

プッシュ通知によるコンバージョン率

プッシュ通知が届いた顧客のうち、「商品購入」や「コンテンツの閲覧」といった特定のアクションをした顧客の割合です。プッシュ通知による特定アクションのコンバージョン率を見ることで、コンバージョンを増加させるためのプッシュ通知の最適化施策を練ることができます。例えば、イーコマースアプリでプッシュ通知の最適化によって売上増を狙う場合、コンバージョンを商品購入とすれば「セール開始!」と「全商品50%オフ!」のどちらが、よりコンバージョン率が高くなるかを検証できます。

6-5-3. アプリ内メッセージ

顧客のコンバージョン率を改善するためにはアプリ内メッセージが有効です。効果的なアプリ内メッセージ施策を行う上で、重要なポイントは次に示す3つです。

表示タイミングを最適化する

アプリ内メッセージは、適切なタイミングに出すことで、アプリ起動時に表示させるよりも高いコンバージョン率を期待できます。例えば、ゲームアプリでステージをクリアしたときやフィットネスアプリでワークアウトを終了したときなど、顧客のアプリへの満足度が高いときにアプリのレビュー依頼をするメッセージを表示することで、よい評価を得られる可能性が高まります。

訴求内容に合わせたメッセージのデザインを選ぶ

訴求する内容によってメッセージのデザインを変えることで、より高いコンバージョン率を期待できます。例えば、バナータイプのダイアログはオーバーレイやダイアログタイプのメッセージとは異なり、アプリの画面全体を覆い隠さないので、アプリ利用中の自然なコンバージョンを促せます。

プッシュ通知と組み合わせる

アプリ内メッセージは、プッシュ通知と組み合わせることでコンバージョン率を高められます。

プッシュ通知は開封率が高い反面、ユーザーが設定で簡単に切ることができるので、頻度が高すぎたり、表示文面が長いとプッシュ通知を解除され、休眠顧客化、アプリ削除につながる可能性があります。タイミング、頻度、文章量は控えめにする必要があります。

アプリ内メッセージはアプリを使うときに表示するために、より詳細な情報提供や告知が可能です。

重要なポイントでプッシュ通知でユーザーに関心をもってもらい、アプリ内メッセージで詳細な情報を適切なタイミングに知らせることでユーザーのエンゲージメントを高め、アクティブユーザー数を高めることができます。

6-6 動画マーケティングにおけるエンゲージメント

動画マーケティングにおいても、エンゲージメントは重要な要素です。なるべく多くのユーザーを集客し、さらにそのユーザーを長く維持するための施策を検討しなければなりません。動画のインプレッションやビュー数を増やすには、アプリ・動画におけるインプレッション参照します。

図:ウェブ解析⼠協会2018フォローアップテスト視聴者維持率推移

図:ウェブ解析⼠協会2018フォローアップテスト視聴者維持率推移

6-6-1. 動画のエンゲージメントを改善する

動画のエンゲージメントを測定するには、「Like」や「共有」、「コメントの数」や視聴時間を調べます。次に挙げる施策を採りながら、エンゲージメントを高めていきます。

チャンネルの購読者を増やす

チャンネルの購読者数は、非購読者に比べて高い頻度で視聴する傾向があり、チャンネル更新時には通知も届きます。広告の配信も一定以上の視聴者数がいないと配信されないため、視聴を増加させるためにはぜひ向上させたい指標です。YouTubeアナリティクスの場合、購読者数は、メニューの「登録者数」から確認できます。

しかし、インセンティブなどを条件に獲得したチャンネル登録者は解除する可能性も高いため、本質的には「動画が面白い」「他の動画も見てみたい」と思わせる動画コンテンツの制作が必要となります。

終了画面やカードの活用

YouTubeを視聴しているユーザーの関心を高めたり、ほかの動画を推薦したりするために「終了画面」や「カード」を活用する方法があります。終了画面とは、PC上で再生している動画に表示できる情報で、 動画の後半にリンクや情報、チャネル登録の依頼などが可能です。カードはモバイルで見られるもので、動画再生中にテキスト情報やリンク情報などを表示できます。カードはどのタイミングでも入れることが可能で、1本の動画に5つのカードを追加できます。

表:YouTubeで活用できる「カード」の種類

カードの種類

内容

チャンネルカード

ユーザーに視聴を呼びかけたいチャンネルにリンクできる。おすすめのチャンネルを紹介できる

寄付カード

米国の居住者は、米国の非営利団体への寄付を募りたい場合に、このカードを設定して寄付を集めることが可能

リンクカード

関連するウェブサイト、クラウドファンディング、販売サイトといった外部サイトにジャンプするリンクを表示する。利用するには、対象のチャンネルが YouTubeパートナー プログラムに参加している必要がある

アンケートカード

アンケートを表示して選択肢に投票してもらうことで、視聴者と交流できる

媒体特性とエンゲージメント

動画は、活用するソーシャルメディアによってエンゲージメントの作り方が変わってきます。再生時間に制限があるものや、最近では視聴するだけではない参加型の動画メディアも増えてきました。動画配信の目的を明確にした上で、ソーシャルメディアの特性にあったコンテンツ制作をしてください。

長時間再生可能な動画メディア

長時間再生可能なメディアでは、長く視聴してもらうことで認知率やエンゲージメントの向上が図れます。平均再生率を見ることで、動画ごとにどのくらいの割合まで視聴し続けたかを確認できます。

さらに、動画ごとの視聴者維持率では、動画においてどこで離脱しているかを把握できます。特に相対的な視聴者維持率を見ると、どこまで視聴したのか、止めてしまうポイントはどこかがわかります。平均再生率が低い動画や平均再生時間が動画全体に対して短い場合は、視聴維持率を参考にしながらコンテンツの見直しを検討しましょう。

短時間再生の動画メディアおよび広告

若年層を中心に急速に利用者を伸ばしている「TikTok」には、基本的には15秒という再生時間の制限があります。ほかのプラットフォームにないスピードの速い構成であったり、音楽に合わせた演出などがあったりするのが特徴です。コンテンツにおいても、音楽、ダンス、お笑いなどをはじめ、若年層が好む内容が多いため、企業がプロモーションを行うのであれば、ターゲットやメディアの特性と合わせて企画することでエンゲージメントが改善されます。

また、YouTubeなどの動画広告配信の場合も、時間制限はないにしても、数秒程度でユーザーに共感を得られなければスキップされてしまいます。つまり、最初の数秒でユーザーへの関心を得られるコンテンツとクリエイティブが重要ということです。

このように、短時間での訴求が必要となる動画配信においては、その後の共感へとつなげていくために複数のソーシャルメディアをハッシュタグなどで関連付けながら展開していくプロモーション設計も重要になってきます。動画配信メディア単体だけではなく、ユーザーのエンゲージメントをさまざまなメディアを通して高めていくことを心がけましょう。

参加型の動画プラットフォームにおけるエンゲージメント

TikTokに代表されるような動画プラットフォームは、ユーザーが視聴して「いいね」や「コメント」などでエンゲージメントするのみならず、「真似」や「遊ぶ」など、ユーザーが一緒に参加するようになってきました。このようなプラットフォームでは、これまで以上に能動的なアクションをユーザーから引き出すことが可能となり、より強いブランド体験が生まれています。

例えば、TikTokで企業プロモーションを行う場合、企業が用意した楽曲やお題をもとに、ユーザーが遊びながら動画を投稿することでUGC(User Generated Contents)が創出されます。このように、動画を見るだけではなく、自らの動画投稿を促すことで、より深いエンゲージメントが生まれ、購買につながるというケースが増えてきています。また今まではCM起用が中心だった有名人をSNSでのプロモーションに活用することも一般的となっており、SNSフォロワーの多い有名人が起用されやすい傾向も増えています。

表:TikTokでUGCを創出するメニュー

メニュー

内容

#Challenge

(ハッシュタグチャレンジ)

企業がブランドに。根ざしたお題をユーザーに投げかけることで、ユーザーの動画投稿(UGC)を促す。中には数万規模のユーザー動画が投稿され、視聴回数も億単位に伸びたものもある。直接売上や来店につながる影響力を持つ

スタンプ

企業オリジナルの動画エフェクトや効果を付加できる。動画投稿を促すことはもちろん、スタンプを使った撮影で遊ぶこと自体がブランド体験となる。中には20万回以上ものスタンプ利用を生み、売上30%向上に貢献した例もある

インタラクティブカード

動画に選択型のカードを差し込むことで、ユーザーのアクションを喚起するメニュー

6-7 チャットの種類とツール

近年、顧客とのコミュニケーション手段が、メール、電話、SMS(ショートメッセージ)からメッセンジャーサービスに移りつつあります。手間がかからないという点が普及しているもっとも大きな理由です。

企業においても顧客との有効な交流手段として発展してきました。特に中国では、チャットが主な顧客と交流手段となっていて、イーコマースでも顧客はショッピングカートで買い物をするよりもメッセンジャーやチャットを通して交渉や相談をして購入に至るケースが多くなっています。ここでは、これらのチャットを使ったコミュニケーション手段を紹介します。

6-7-1. チャットの種類

ここでは3種類のチャットサービスを紹介します。

メッセンジャーアプリ

LINEやWhatsAppなど、スマートフォンでチャットをするためのアプリです。顧客登録することで利用でき、基本的には事前に承認して相手と友達になっていないとメッセージを届けることができません。多くの場合、アプリ内で音声通話も可能で、複数名での音声ミーティングにも対応できます。

WeChatのように、メッセンジャーの中で音声を記録してやりとりできるものもあります。また、スタンプや絵文字などを使って、文字では表現できない感情・状況表現ができます。近年では、タイムライン、決済機能や企業のポータルサイト的な役割を担うことで、ソーシャルメディアとしての進化も進んでいます。

  • WhatsApp:世界で最も利用されています。機能は多くありませんが、ソフトウェアが軽いため端末を選ばない利点があります。
  • LINE:日本・タイ・台湾で普及しています。スタンプが使えるほか、決済(LINE Pay)、求人などのサービスがあります
  • WeChat:中国を主に世界中で使われています。音声のチャット中心にはじまりました。WeChat Payによる決済からミニプログラムによるキャンペーンやECなどのサービスを提供できます
  • SnapChat: <https://www.snapchat.com/>マルチメディアメッセンジャーで、画像、動画中心で利用します。閲覧すると送信内容がすぐ消えるようになっています
  • Telegram: <https://www.telegram.org/>ロシアのSNS、VKの開発者によるメッセンジャーで高いセキュリティと匿名性がありますが、そのため開発元のロシア含め多くの国で利用が禁止されています

WeCHAT PAY決済のミニプログラム

WeChat内でアプリのように使うことができるサービスのこと。インストールは不要である

ソーシャルメディアメッセンジャー

FacebookやTwitterなどに備わっていた個別顧客との連絡手段としてのチャット機能が発展したものです。特にFacebookでは、このメッセンジャーツールだけを独立させており、Facebookページなどと連携することでマーケティングでの活用も可能です。このメッセンジャー広告を出すこともでき、使い方によっては強力な機能があります。

チャットサポートシステム

自社のウェブサイトやアプリに設置することで訪問した顧客が使えるチャットツールです。無料や有料のツールもありますが、基本的にはタグを設置することでウェブサイトにチャットを表示できます。Facebookなどのソーシャルメディアのメッセンジャー機能を使って代替することもありますし、いくつかのメディアを連携させる機能を持つものもあります。

これらのツールは、担当者が対応できない場合は、メールに問い合わせが届くなどの仕組みになっていて、必ずしも即時性だけが目的ではありません。顧客は原則的には匿名で相談することもできるので、気軽に相談することができるのもメリットの一つです。

6-7-2. チャットのメリットとデメリット

チャットを利用するには、次のようなメリットとデメリットがあります。

コンバージョンの増加

コンバージョン前に相談したい顧客にとって、不明点にすぐ対応してくれるので、コンバージョンの向上に貢献できます。

顧客満足度向上

コンバージョンに至らない顧客にとっても満足度向上に貢献します。ただし、対応が不十分であると満足度が下がるリスクもあることには注意が必要です。

サポートの軽減

後述のチャット支援サービスを利用することで、担当間で情報共有し、対応の分担をすることや、回答を自動化ができるようになります。これによって、情報を探せなかった顧客の電話やメールでの問い合わせが減るため、サポートのコストが軽減できます。

一方で、チャットを利用する場合、問い合わせの増大によるサポートコストの増大、顧客対応が不十分になることによる満足度の低下などを起こす可能性もあります。チャットを利用する場合は、十分なテスト運用を行い、サポートコスト軽減のためには支援サービスの利用を検討しましょう。

6-7-3. チャット支援サービス

次のような支援サービスを利用することで、組織的・効率的な対応が可能となります。

チャットのツール

チャットを含めて、メール、電話問い合わせへの対応を効率的に組織で運用するサービスです。チャットやメールを受け取ったときに担当を割り振り、電話履歴も含めた顧客ごとの担当履歴を記録することで、漏れなく対応します。

例えば、多様化する連絡チャネルを担当者ごとに一元管理するための「Franz」 <https://meetfranz.com/>というメッセージアプリケーションでは、メール、メッセンジャー、ソーシャルメディアなどを一元管理できます。無料で使い始めることができ、Slackなどのコミュニケーションシステムにも対応しています。また、Zendesk <https://www.zendesk.co.jp/>は、サポート対応のためのソリューションです。ソーシャルメディアのメッセンジャーから電話対応まで、組織的に効率的な対応をするためのナレッジの共有を可能としています。

チャットボット

チャットによる対応を自動化できるシステムを「チャットボット」といいます。

オウンドメディア向けチャットボット

オウンドメディア上にチャットを設置し、顧客の質問に対して回答を自動化したり、複数の選択肢を提供したりすることで担当者による対応を削減します。例えば、(株)ユーザーローカルが提供しているサポートチャットボット <https://ai.userlocal.jp/>では、選択肢を用いて質問を体系化した上で、フリーワードによる質問への回答も可能です。

ソーシャルメディア向けチャットボット

ソーシャルメディア向けチャットボットは、一般的なサポートの意味でのチャットの自動化も可能ですが、リー ドを獲得、ロイヤリティを高めるために使うことも可能です。例えば、次のような方法で顧客を購買まで誘導します。

  • Facebook登録を誘導する広告を配信する
  • 登録した顧客に対してサービス紹介動画やホワイトペーパーをメッセンジャーで送信する
  • 動画の視聴時間やホワイトペーパーのダウンロード完了をもとにオンラインウェビナーを紹介し、その視聴時間が一定以上を超えた顧客に対して製品のトライアルクーポンを提供する

このような一連のやりとりを自動化することで、Facebookで完結したマーケティングも実現できます。同様にして、LINEを使ったチャットボットによるマーケティングも日本では一般的になっています。ManyChat <https://manychat.com/>はFacebookのページでチャットによる対応を自動化できるソリューションです。無料版もあります。

顧客の挙動に合わせ、送るメッセージとタイミングを決めることで自動的にメッセージ配信ができます。

6-7-4. エンゲージメント向上と間接効果

企業と顧客接点において、直接的なコンバージョンに加え、間接効果を見込むことができます。ここではエボラ二社のanybotを活用する方法を紹介します。

マルチプラットフォーム対応

顧客はさまざまなチャネルで自社/ブランドに接点を持ちます。またボーダーレスが進む世界においてはグローバル対応を考慮することは必須です。

anybotは、マルチプラットフォーム対応をしており、LINE、ウェブ、Messenger、SMS、メール、電話での顧客接点を管理できます。顧客接点の種類、方法を説明します。

1. メッセージ配信

メッセージ配信は、顧客のコンバージョン獲得や顧客を離れさせないリテンション効果を促す施策として有効です。ネイティブアプリのプッシュ通知と異なり、開封率が高いのも特徴です。

定期配信

顧客との接触時間を増やための定期配信は有効です。定期配信そのものはもちろん発信者にも好感を持ってもらいやすくなります。時間をかけて好感度と信頼度を高めていくと、紹介する商品やサービスのことも信頼してもらいやすくなるでしょう。そこから優良な見込み客を開拓し育成できるのです。直接的なコンバージョンだけでなく、顧客のマインドシェアを獲得し、リテンションされやすくするための施策を行うことができます。

セグメント配信

メッセージ配信は内容によって、一括配信する場合と、ユーザセグメントによって配信内容を変えることでエンゲージメントを高められます。セグメントは、年齢・性別などのデモグラフィックデータのほか、過去の購買履歴などのアクションによってセグメントも効果的です。

メッセージアプリ内のアクションが顧客の行動履歴として蓄積され、このデータをもとにユーザセグメントを作成できます。

さまざまな配信フォーマット

それぞれのツールを活用することで、さまざまなフォーマットでの配信が可能で、目的や用途によって使い分けることでさらにエンゲージメントを高めることできます。

テキスト、画像、動画、カルーセル、イメージマップなどメッセージ配信は配信内容、セグメント、タイミングの3つを最適化することで、エンゲージメントや間接効果を含めた効果の最大化が図れます。

2. メッセージアプリを使った顧客とのタッチポイント

さまざまな顧客とのタッチポイントでメッセージアプリを活用でき、ユーザセグメントを作る元データが蓄積されます。飲食店を例として、顧客とのタッチポイントを例示します。

事前アンケート/コンシュルジュサービス

友だち追加時に事前アンケートや顧客診断のようなコンシュルジュ機能を設定できます。ここで蓄積したデータをもとにユーザセグメントを作成し、セグメントごとにメッセージ配信を行います。顧客が興味をもってくれたタイミングで適切な設問を問いかけられると以降の運用が非常に効果的になります。

また、イメージマップを使って、言語選択させることで、インバウンド向けのグローバル対応も可能です。

友達招待

自社、ブランドからの一方通行なコミュニケーションではなく、SNS要素を加えたものが「友達招待」になります。

LINE上で、自社・ブランドアカウントに友達を招待することにより招待者・非招待者ともに割引クーポンなどのインセンティブを付与することができます。

例えば、Uberのユーザ獲得施策のように招待コードを送った人は「500円割引」、招待コードをもらいアプリインストールした顧客は「初回1,000円割引」といった施策です。

お店からの一方的な配信は「広告」を受け止められやすいですが、「友達」からのメッセージは開封率も高く、アカウントもユーザから支持されやすくなります。

シェア可能なクーポンに設定することで、さらにLINEタイムラインを通じて拡散していく効果も期待できます。

事前予約・決済

レストランや居酒屋の場合、席空き状況の確認から料理コースの予約、事前決済までをメッセージアプリ内のミニアプリを使って完結できます。決済手段も各種オンライン決済に対応することで飲食店ではインバウンド需要へのニーズへ対応しています。

また、POSシステムとAPI連動することで顧客がどんな注文を行ったかをトレースした上で、エンゲージメントを高める施策に活用することが見込めます。

デリバリー・テイクアウト

コロナ禍で一気に普及した「デリバリー・テイクアウト」も今後重要な顧客接点になります。デリバリー・テイクアウトは新規顧客の「お試し」として使われることもあるため、デリバリー・テイクアウトを起点としてエンゲージメントを高めることで、来店というコンバージョンを達成するきっかけになります。

来店ポイント

オンライン上のポイントカードシステムを構築し、再来店を促すことができます。LINE上でポイントカードシステムを構築できます。

スマート決済

来店した顧客の店舗決済もメッセージアプリ上から行うことができます。グローバル対応として、各種クレジットカードのほか、QRコード決済も可能です。

顧客アンケート

決済をメッセージアプリ上のスマート決済を行った場合、退店後、一定時間後に顧客アンケートを自動送信し、顧客の声を収集することができます。

アンケートは退店直後一番回答率が高いため、このタイミングに送り、収集することが重要です。

お店体験直後の「熱のある」フィードバックがお店のさらなる改善に役立ちます。

顧客対応

メッセージアプリをメッセージ配信だけでなく、問い合わせ・顧客とのチャットツールとして活用できます。

問い合わせ対応の工数削減のために、自動応答機能を使ったFAQも効果的です。他言語版のQ&amp;Aを用意すれば、問い合わせのグローバル対応も実現できます。

6-7-5. テンセント(Tencent)の消費者向けサービスと決済システム

テンセント(騰訊:Tencent)は1998年に創業したSNSやウェブホスティングサービスなどを提供しているIT企業です。アプリの収益力では世界一であり、売上高から世界最大のゲーム会社と評されることもあります。

テンセントが展開する主要サービス

Qzone(QQ空間)

2005年にリリースされて大ヒットしたブログサービスです。写真にコメントを付けてチャット空間に日記のようにポストできます。中国のサーバーでサイトを開設するのに必要なICPの登録番号を個人が取得することは現実的ではないので、Qzoneが個人サイトの代わりになりました。そこで多くのネットユーザーが、QQのアカウントを持つようになりました。

WeChat(微信)

中国でもっとも利用されているコミュニケーションアプリのひとつで、2012年に正式に配信されました。LINEのように無料でメッセージ交換と通話することができるアプリです。中国人が日常メッセージをやり取りする場合は、ほぼWeChatで行われている状況です。QRコードを積極的に活用したことで、決済や広告展開までもがスムーズにできるようになりました。日本でも、インバウンド客向けPRなどの利用が進んでいます。

個人間でのお金のやり取りにも使えるWeChat Pay

AliPayと肩を並べて大きなシェアを占めている電子決済サービスが「WeChat Pay(微信支付:ウィーチャットペイ)」です。WeChat Payは、WeChatのアプリに組み込まれている決済サービスです。「WeChatのアカウントを持っている人なら誰でもウォレットを持てる」というイメージで中国人のオンライン決済を一変しました。

オンラインでの支払い

商品やゲームを買うことができます。

リアル店舗での支払い

小売店や飲食店にてスマホでQRコードを読み込んで支払えます。

個人間のお金のやり取り

相手のアカウントがわかれば遠隔地で、目の前にいる人であれば、その場で相手のスマートフォンのQRコードを読み込んで、個人間でお金がやり取りできます。10元や20元といった少額を貸し借りする場合や、支払時の割り勘、さらにはお年玉をあげるときにまで、すべてがWeChatのアプリで完結できるようになっています。

スマートフォンにアリペイとWeChat Payのアプリを入れている人が多いため、WeChat Payの電子マネーによる決済機能サービスは、こうして急速に人々の生活に浸透し、中国のほとんどの決済で利用できます。中国の多くの人々は、銀行に行くこともお財布を持つ必要もなくなっています。

マーケティングツールとしてのWeChat Pay

リアル店舗では、QRコード決済は、店舗でメニューを表示して注文するなどの、ユーザーの利便性向上のみならず、店舗の広告展開にも役立っています。QRコードを読み込んだ際に、お店のポイントが自動で加算されるサービスもあり、多くの店に採用されています。この際に取得したアカウントに対して、セールやキャンペーンの広告情報もWeChatのアプリ上で一斉配信することができます。買い物客がレジのQRコードをスキャンするだけという手軽さがポイントです。アプリをインストールする時間も手間も必要ありません。

またミニアプリというWeChat上で動くアプリを利用することで、決済したユーザーへのプロモーションや宿泊予約、キャンペーン・クーポンの受け取りなどもできます。

6-7-6. チャットアプリによるエンゲージメント向上施策と間接効果

SIPS/DECAXモデルの顧客接点それぞれにおいて、直接的なコンバージョンに加え、間接効果を見込むことができます。anybotを例にチャットアプリによるエンゲージメント向上施策と間接効果を紹介します。

マルチプラットでユーザーを接点を持つ

顧客はさまざまなチャネルで自社/ブランドに接触します。またボーダーレスが進む世界においてはグローバル対応を考慮することは必須になります。

anybotのようなマルチプラットフォーム対応をしているチャットアプリなら、LINEのほか、ウェブ、Facebook Messenger、SMS、メール、電話(IVR)での顧客接点を管理できます。

適切なメッセージを配信する

メッセージ配信はユーザのコンバージョンやリテンションを促す施策としてとても有効です。ネイティブアプリのプッシュ通知と異なり、開封率が高いのもメッセージ配信の特徴です。メッセージには以下の方法があります。

1. 定期配信で時間をかけて高感度をあげる

ユーザーとの接触時間を増やための定期配信は有効です。定期配信そのものはもちろん発信者にも好感を持ってもらいやすくなります。時間をかけて好感度と信頼度を高めていくと、紹介する商品やサービスのことも信頼してもらいやすくなるでしょう。そこから優良な見込み客を開拓・育成できるのです。直接的なコンバージョンだけでなく、顧客のマインドシェアを獲得し、リテンションされやすくするための施策をanybotを通じて行うことができます。

2. セグメント配信で適切なユーザーにメッセージを送る

メッセージ配信は内容によって、一括配信する場合と、ユーザセグメントによって配信内容を変えることでエンゲージメントを高められます。セグメントは、年齢・性別などのデモグラフィックデータのほか、過去の購買履歴などのアクションによってセグメントも効果的です。

anybotでは、メッセージアプリ内のアクションが顧客の行動履歴として蓄積され、このデータをもとにユーザセグメントを作成できます。

3. さまざまなコンテンツを配信する

テキスト・画像・動画・カルーセル・イメージマップなどさまざまなフォーマットで配信しましょう。anybotはすべて対応しています。

これら1.〜3.を目的/用途によって使い分けることでエンゲージメントを高めることできます。

「カルーセル」とは

複数の画像を回転しながら表⽰すること

店舗で必要なのはバーティカルを強化したデジタル化が必要

コロナ禍の中、店舗などオフラインに依存していた業界でデジタル化が求められています。ユーザーはオフラインの接触を減らすため、オンラインでの接点やサービス提供が事業存続に関わるようになりました。

ITに対する経験も知識も低い中で、デジタル化を進めるためには、なるべくシステム間で利用する経営者・従業員の負荷が低いサービスが求められます。

一方で、経営資源が豊富なわけではなく、コスト的に無理がなく、かつ中小零細企業でも使える操作性の高いサービスをウェブ解析士は提案しなければなりません。

チャットシステムやアプリなど適切なサービスを提案するようにしましょう。

「バーティカル」とは

バーティカルソリューションのこと。マーケティング、受注、決済などの1つの業界に特化、業務を垂直に統合し、管理できること